【焼酎&泡盛スタイル特集】林真理子さん 大河ドラマ原作本『西郷どん!』インタビュー

大河ドラマ「西郷どん」(せごどん)の放映で盛り上がりを見せる鹿児島県。「焼酎&泡盛スタイル」では、2018年大河ドラマ原作本『西郷どん!』を執筆された作家 林真理子さんにお話を伺ってきました。薩摩藩の下級武士の家に生まれた西郷隆盛は、第11代藩主 島津斉彬に見いだされて頭角を現します。江戸や京都での活躍、遠島での経験、奄美大島の妻・愛加那(あいかな)との出会い……激動の幕末を生き抜き、新たな時代を築いた人物・西郷隆盛。今回は11月2日にサンエールかごしまで行われた林真理子さんの合同取材の質疑応答で語られたコメントをお届けします。人間味あふれる西郷隆盛の生涯を描いた『西郷どん!』の読みどころや執筆時の苦労、鹿児島県の本格焼酎にまつわるエピソードなど必見です!

【profile】  林 真理子/ Mariko Hayashi(作家)
1954年山梨県生まれ。日本大学芸術学部卒業。1986年「最終便に間に合えば」「京都まで」で直木賞、1995年『白漣れんれん』で柴田錬三郎賞、1998年『みんなの秘密』で吉川英治文学賞、2013年『アスクレピオスの愛人』で島清恋愛文学賞を受賞。2013年刊の新書『野心のすすめ』は独自の人生論が多くの共感を呼びベストセラーに。そのほか『葡萄が目にしみる』『ミカドの淑女』『聖家族のランチ』『RUMIKO』『正妻 慶喜と美賀子』『我らがパラダイス』、人気エッセイ“美女入門”シリーズなど、小説、エッセイ両分野で活躍中。

大河ドラマのロケ地・鹿児島にて。林真理子さん著書『西郷どん!』インタビュー

焼酎スタイリストyukikoです。2018年1月から放映が開始されている大河ドラマ「西郷どん」(せごどん)の盛り上がりは、11月1日の「本格焼酎の日」に関する鹿児島県取材でも随所に感じられていました。

ちょうど「本格焼酎の日」は、2018年大河ドラマの原作本・歴史小説『西郷どん!』発売日(2017年11月1日発売/KADOKAWA刊)。林真理子さんが手がけた同作は、鹿児島空港をはじめとする県内の至る所で並べられ、本格焼酎イベント「焼酎ストリート」取材中も蔵元や来場者が「今日、このイベントが終わったら本屋に買いに行こうと思って」と話されていたほど。

鹿児島県の人たちにとって“西郷隆盛”という明治維新を成し遂げた人物の存在の大きさを感じましたし、林真理子さんの著書『西郷どん!』発売の期待値が表れていました。

西郷吉之助(のちの隆盛/1828-1877年)は、薩摩藩の下級武士の家に生まれ育ちます。両親を早くに亡くし、自分も貧しい生活をしているにも関わらず、困っている人を放っておけない性格の持ち主。そんな吉之助は、第11代藩主 島津斉彬に見いだされて頭角を現します。江戸や京都と飛び回る時期を経て、奄美大島での潜居、徳之島と沖永良部島への遠島、3度の結婚による人生観の変化……新しい時代を求めて幕末の変革期を生きた人間味あふれる西郷隆盛の姿が『西郷どん!』では描かれています。

今回は、大河ドラマの原作を担当されている作家 林真理子さんからお話をお聞きする機会がありました。11月2日にサンエールかごしまで行われた合同取材で伺った『西郷どん!』執筆時のお話や、本格焼酎に関するエピソードをお届けします。

林真理子さん、歴史小説『西郷どん!』完成までの想いを語る

「執筆はとてもつらかったんです。自分には荷が勝ちすぎた仕事ではないかと自問自答しながらやっていました」と1年8か月にも及ぶ執筆活動を振り返る林さん。複雑な幕末の時代を忠実に描こうとすればするほど袋小路のような状態になることも。膨大な資料を読み込み、西郷隆盛の人物像を掴むために何度も鹿児島本土や奄美諸島に足を運び、専門家の意見を取り入れながら歴史小説『西郷どん!』を書き上げていったそうです。

林真理子さんの著書『西郷どん!』の特徴は、西郷隆盛という人物の一生に焦点を当てて描かれていることです。ファンの多い司馬遼太郎さんの著書『翔ぶが如く』では大久保利通とダブルキャストのように描かれていますし、今回のように西郷隆盛の人生に特化して青年期から書かれている作品は珍しいのです。

『西郷どん!』の中でページ数を費やして描かれているのが、今まであまり語られることのなかった西郷隆盛の奄美時代です。奄美大島での潜居や徳之島・沖永良部島への島流しなど、かなり過酷な体験をしている時代であり、男女の愛、子どもへの愛を知った部分でもあります。西郷隆盛という人物の新たな一面を形成した重要なシーンになっています。

現在の奄美諸島は美しい自然が広がり、独自の文化・習慣が受け継がれていて観光にも大変魅力的な地です。2018年夏のユネスコの世界自然遺産登録に向けて「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」は注目されています。

一方で奄美諸島の歴史を振り返ると、琉球王朝の勢力圏に入っていた島もあったり、江戸時代には薩摩藩の直轄下だったりと、現地の人たちにとっては自由が制限される時代を経て今の奄美諸島があります。今では奄美黒糖焼酎の原材料として使用されている黒糖も、当時は砂糖が貴重な時代でもあったために藩の重要な財源とみなされていました。

林さんも、奄美の地が歩んできた現実を切に受け止め、解釈をしながら、西郷隆盛の奄美時代を執筆したそうです。

林真理子さんが描く歴史小説『西郷どん!』。現代女性と共通する登場人物は?

「焼酎&泡盛スタイル」は、日本の伝統的なお酒(國酒)「焼酎・泡盛」の飲み方や楽しみ方を“時流”に合わせて情報発信しています。そのため、感度の高い女性読者の多いウェブマガジンです。

私は今回の取材のために『西郷どん!』を事前に読ませていただいたのですが、仕事や家事、プライベートを大事にしながら懸命に生きる現代女性の姿と、『西郷どん!』で描かれている西郷隆盛や登場人物の姿は重なる部分があるように感じました。

様々な著書において独自の目線で“女性の生き方”を描いてきた林真理子さんに、歴史小説『西郷どん!』を書き上げるうえで現代女性と近い人物について伺ってみました。

「西郷隆盛の周囲には献身的に彼を仕える女性たちがいます。いろいろな女性ファンが西郷隆盛についていたと思うんですね。執筆していて、愛加那さん(あいかな/西郷隆盛の2番目の妻)をはじめとする女性のなかで人気があったのが、お虎(とら)さんです。京都の仲居さんなのですが「自分は一人で生きていく女だから、私にはお金がかからない。ひたすらあなたを愛するだけです」と西郷隆盛への愛と貫いた方です。この方が“格好いい”と一番共感を得ていたので、現代女性に近い生き方をしているのではないでしょうか」

生涯で3度の結婚をした西郷隆盛が、独身時代にひいきにしていた祇園「奈良富」の仲居です。ちなみに、このお虎さんはお酒が好きな女性だったようです。

ファンも気になる……人気作家 林真理子さんのお酒の楽しみ方とは?

今回、『西郷どん!』の発売に合わせてトークショーやサイン会などに出席されるために鹿児島に来られた林さん。鹿児島県奄美大島の特産品でもある大島紬の着物をお召しになって登場されていました。大島紬は手作業で紡いだ絹糸や絹布を「泥染め」という伝統的な染色技法よって、落ち着きある独特の風合いに仕上げたものです。

大島紬同様に、焼酎の文化が現代に受け継がれている鹿児島県。やはり、林さんのお酒の楽しみ方も気になるところ……。そこで普段どのように本格焼酎を楽しんでいるのか、『西郷どん!』執筆時のエピソードと一緒に教えていただきました。

「鹿児島県の焼酎はどれも美味しいですし、何よりも糖質がないのが魅力です。お酒を飲む時はワインなど他のお酒を選ぶこともありますが、基本的に焼酎を飲むことが多いんです。私の周りには焼酎を飲まれる方も大勢いらっしゃいますし、『西郷どん!』の仕事で鹿児島に来るたびに美味しくいただいています。今日、昼間にお寿司をいただいた時に焼酎と合わせたかったのですが、仕事が終わった夜に美味しく飲もうと思ってぐっと我慢しました」

林さんにとっても本格焼酎は身近なお酒であり、普段から鹿児島県の文化を近い距離で楽しんでいらっしゃるようです。

「4年ほど前に奄美黒糖焼酎「愛加那」(大島食糧酒造所)をいただいて、いつか大河ドラマになる時にこれを飲もうと思っていたんです。今回ちょうど叶いましたね」

歴史小説『西郷どん!』と大河ドラマ「西郷どん」。原作者おすすめの楽しみ方とは?

今回の大河ドラマ「西郷どん」は、中園ミホさんが脚本を務められています。西郷隆盛は男性にも女性にも慕われ愛された“史上最大の人物“と言われていて、そんなヒーローの生涯を現代が代表する女性クリエイターのお二人がコンビを組んで描くことも話題になっています。

原作本とドラマは異なっていて良いものであり、西郷隆盛が「理想の国家」を目指して貫いた部分は中園さんと共有していると話す林さん。原作本とドラマから伝えられるお二人のメッセージを感じ取るのも、2018年大河ドラマを見る楽しみ方かもしれません。

最後に、林さんが原作本『西郷どん!』を読む方々に向けて語って下さったメッセージを紹介します。

「幕末の歴史をあまりご存知ではない方や女性が読んでも分かりやすいように『西郷どん!』を書きました。私がもともと歴史オタクではないので、歴史観や幕末の哲学を持っていないところから取材や執筆がスタートしています。

だから掘り下げて書くのがとても難しかったのですが、そのぶん読む人には一から理解しやすいように工夫して書いています。西郷隆盛の魅力的なキャラクターも含め、随所にこのような工夫を盛り込んでいますので、読む人にとっては“優しい本”に仕上がっているのではないでしょうか。

良い意味で原作本『西郷どん!』と大河ドラマの違いに注目してほしいですし、本を通して西郷隆盛の想いや彼を取り囲む人たち、薩摩と奄美の風土や歴史を感じてもらえたらと思います」

林さん、ありがとうございました。

《林真理子さん関連情報》

■『西郷どん!』林 真理子 著 ■
2018年大河ドラマ原作 / 株式会社KADOKAWA 発行(電子書籍も配信中)

【上製版】単行本・全2巻(定価)各巻 1,836円
装丁:片岡忠彦/装画:水口理恵子

【並製版】単行本・全3巻(定価)各巻 1,000円
装丁:片岡忠彦

■2018年(平成30年)大河ドラマ「西郷どん」■
【放送開始】2018年1月7日(日)より
【原作】林真理子
【脚本】中園ミホ
【音楽】富貴晴美
【主演】鈴木亮平
【プロデューサー】小西千栄子
【演出】野田雄介、盆子原誠、岡田健

[取材・撮影・文]yukiko(焼酎スタイリスト、ファッションスタイリスト)
[場所]サンエールかごしま
[協力]色彩総合プロデュース「スタイル プロモーション」
※写真の無断使用はお断りしております。ご理解のほどよろしくお願い致します。


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