【本格焼酎特集】未来へつなぐ熊本・天草地域イベント「新和 de KANPAI」

蔵元の熱心な取り組みが、人々の心を動かし、地域を元気づけるきっかけになることがあります。そのひとつの例が、熊本県天草市の新和地区で行われた地域活性イベント「新和 de KANPAI」です。天草市唯一の蔵元 天草酒造をはじめとする地元若手メンバーが企画運営したイベントに伺いました!地域活性や地域資源活用支援に注力する焼酎スタイリストyukikoも現地取材をしています。

天草で唯一の焼酎蔵・天草酒造が会場に!地域イベント「新和 de KANPAI」

4月23日(日)、熊本県天草諸島にある新和地区では、天草唯一の蔵元・合名会社天草酒造の敷地内で蔵開きを兼ねた地域イベント「新和 de KANPAI」が行われました。”焼酎×新和の食×ロケーション”を全面に押し出したイベント当日は、近隣の地区や熊本県内、そして鹿児島県をはじめとする九州各県からも、この日を毎年楽しみにしている天草酒造ファン、新和地区のファンの皆さんが訪れていました。

晴天に恵まれ、イベントが開演!天草諸島の下島の東部に位置する新和地区には楊貴妃の伝説があり、それにちなんだ楊貴妃太鼓公演では、地元の子どもたちによる和太鼓の音が響き渡りました。

当日は「新和 de KANPAI」以外に、天草市内で運動会やイベントが重なっていた日。それでも、昨年から開催されている「新和 de KANPAI」を楽しみにしていた地域の皆さんは、地元の運動会に出てから「新和 de KANPAI」に参加されるなど、すでにまちの恒例行事として定着していました。

 

新和を盛り上げよう!若手メンバーで構成「新和グッドカンパニーズ」

地方の過疎化が進む近年、新和町も例外ではありません。新和を愛する若い力で何かできないか、子どもたちの未来へつなげるために何かできないかという想いによって新和地区で結成された団体が「新和グッドカンパニーズ」です。

天草酒造をはじめとする地元企業や店舗が一致団結して、地域貢献を目的としています。その取り組みのひとつが、今回の「新和 de KANPAI」です。

天草市では、現在、若手の地域活動が活発に行われています。「新和グッドカンパニーズ」の他にも、すでに「河浦青年同志会」「牛深GNK」といった各地区の若手中心で構成された地域団体が存在します。3つの団体が各地域を盛り上げ、時に協力し合い、天草の魅力を伝えようと活動しているのです。

焼酎蔵である合名会社天草酒造 社長・平下さんも「新和グッドカンパニーズ」のメンバーです。
「小さいまちですが、みんな天草という地、新和という地が好きな人が多いんですよね。その想いによって、河浦・牛深のメンバーも朝早くから集合して今回はイベントに参加してくれています。今年は地元の運動会や熊本市内のイベントが集中した日の開催ですが、天草諸島の下部にある新和まで足を運んで下さっていることがとても嬉しい。自分たちの活動は、天草の皆さんに支えられているんです」

天草諸島で復活した芋焼酎「池の露」

天草酒造の代表銘柄「池の露」も、全国に天草という地をPRする役割に一役買っています。天草酒造は、手造り、甕仕込みにこだわって芋・麦・米焼酎を製造しています。熊本県といえば人吉地区の米焼酎が有名ですが、天草地区で造られる「池の露」は芋焼酎です。

一時期、市場ですっきりした減圧蒸留の米焼酎が人気になったことがきっかけで、芋焼酎「池の露」は26年間生産を行っていませんでした。

しかし、さつま芋や麦など原材料の豊かな風味が生きた本格焼酎が再び着目されるようになったことを機に、平下さんが平成18年に26年ぶりに復活させた芋焼酎銘柄が「池の露」なのです。

首都圏でよく見かけるのが左の「池の露」。日が昇るデザインは、今回のイベント会場でもある天草酒造の蔵から見える朝日が描かれています。創業当時の和甕と甑を用い、手麹から全行程を手作業!少量生産です。原料のさつま芋は鹿児島県産ですが、お酒はその土地によって製法や味わいが異なるため、鹿児島県や宮崎県の芋焼酎とはまた異なった味わいを持っています。一度は飲んでほしい、ファンの多い天草酒造の代表銘柄です。

新和発信!天草ブランドを全面に押し出した今年の「新和 de KANPAI」

今回の「新和 de KANPAI」の目的は”焼酎×新和の食×ロケーション”。そのため、第1会場、第2会場では新和地区で採れる食材が豊富に出ていました。あおさをふんだんに使ったかき揚げやスープ、マグロやウニの握りやちらし寿司……すべて地元で採れた食材です。

熊本在住や天草出身の来場者が驚いていたのはブランド地鶏「天草大王」のコロコロ焼き。地元でもなかなか食べる機会がないという希少性の高い地鶏です。今回は、熊本市内にある飲食店「焼鳥と全国の銘酒 福みみ」のメンバーが天草に集まり、イベントをサポートしていました。

(福みみ本店・寺田さん/写真右)今年は新和地区の運動会やお祭りと行事が重なっている日なのに、地元の皆さんが合間を見つけて参加されていて、このイベントが地元地域に密着しているのだという光景を見ることができました。天草の特産品や地元食材にこだわって各店舗が出店していて、前回よりも来場者にわかりやすいコンセプトだったのではないかと思います。

私たちの店は熊本市内にあって、通常は「天草大王」の取り扱いはしていません。でも、今回天草酒造をはじめとする「新和グッドカンパニーズ」の活動を受けてサポートさせていただきました。「天草大王」のコロコロ焼き(炭火焼き)を皆さんに食べてもらうことができたので、天草ブランドを広める役目ができて光栄でした。

(福みみ2号店・熊野さん/中央)熊本の震災もあったので、天草から熊本を盛り上げようという想いで参加しました。「福みみ」の両店舗とも4年くらい前まではそれほど銘柄にこだわらず、ごく一般的な銘柄を扱う店でした。でも天草酒造 平下さんと出会って、造り手の熱い想いや男気に共感して「この人のお酒を売りたい、地域を応援したい」と思うようになって……「福みみ」両店舗で扱う本格焼酎をすべて切り替えました。

「池の露」はじめ自分たちがこだわったお酒をお客様に提供できる喜びは、仕事のやりがいになっています。自分にとっても天草酒造の存在は大きいですし、これからも天草の良さを自分たちなりにPRできたら嬉しいですね。

天草・新和地区を盛り上げたい!その想いで集まった人たち

「新和グッドカンパニーズ」「河浦青年同志会」「牛深GNK」のメンバー中心に地元天草・新和地区を盛り上げてました。

新和町を海から眺める!船上の焼酎バー臨時開店!

「新和 de KANPAI」では、海から天草諸島を眺め、本格焼酎を楽しむ企画も実施されていました。鹿児島県長島を結ぶフェリーも定期的に出ていることから、船上では天草酒造「池の露」、長島研醸「さつま島美人」の本格焼酎が用意されていました。熊本市内の焼酎バーの店主が、当日限りの船上焼酎バーを切り盛りします。

参加されていた女性は「天草出身者で久々に帰ってきましたが、以前よりも若い人たちが地元を盛り上げてくれるようになりましたね。”帰ってくることのできる場所”があるのはとても嬉しい。こういうイベントによって、改めて天草や新和の良さを実感できます」と、「池の露」の水割りを片手に話して下さいました。

船上バーでバーテンダーを務めた熊本市内の焼酎バー「焼酎の御縁 晴」店主・井上さん(写真中央)も「新和 de KANPAI」をサポートしているひとりです。

「私が熊本市内で焼酎バーを開店する際に、実際に蔵で修行させてもらった経験があり、天草酒造はとても想い入れがある蔵元です。造りやラベル貼り、出荷など一連の流れを教えて下さいました。今回の船上バーでは自分が体験した天草の魅力、天草酒造の魅力をお伝えしました。天草らしいロケーションを海から眺められるので皆さんがとても感激されていましたね。こういう出会いをきっかけに、天草酒造の焼酎が広まっていったら嬉しく思います」

熊本県内外から蔵元も参加!

天草酒造の地域活動を応援する蔵元も、熊本県内外からイベントに参加されていました。左から松下酒造場(熊本県)、杉本酒造、万膳酒造(ともに鹿児島県)の蔵元。蔵元がチャレンジする利き酒大会も行われ、会場は大盛り上がり。蔵元が自社銘柄を当てられるのか……など、来場されていた焼酎ファンにはたまらない雰囲気になりました。

イベント後には、中村酒造場(鹿児島県)の蔵元も合流!蔵元にとっても、互いの活動を応援し、情報交換ができる場が「新和 de KANPAI」にはあります。

新和を支える「新和グッドカンパニーズ」そしてメンバーでもある天草酒造の取り組みは、多くの人たちの心を動かし、新和ファンを増やすきっかけになっています。来年の「新和 de KANPAI」もまた、熊本県天草市新和地区のPRとなり、地域活性につながるイベントになるよう、きっと誰もが応援していることでしょう。

 

焼酎スタイリスト yukiko のリアルトーク

今回は地域イベント「新和 de KANPAI」を通して、天草酒造をはじめとする熊本県天草市新和地区の企業や店舗で結成された「新和グッドカンパニーズ」の活動を紹介しました。

伝統文化産業である焼酎は、地元地域の気候や風土に根付き、地元の人たちに支えられ今日まで続いているものです。実際に足を運ぶと、焼酎が造られる工程だけではなく、焼酎が生まれる地を知ることができます。

現在、日本各地で地域資源活用や地域活性に対して力が注がれていますが、そもそも地域資源は”有限”です。未来へつながるヒトとモノが存在しなければ、活用や活性は成り立ちません。過疎化が進む天草では、未来へつなぐための取り組みを行っていると言えます。

過去には天草にも複数の酒蔵があったそうです。それが今では天草酒造1蔵になり、天草という地、新和というまちをお酒で表現できるのは、もはや天草酒造だけに……。それを守り続け、未来で語れる環境をつくるのは蔵人の”挑戦”でもあります。そのようなエピソードを、次回リリース予定の天草酒造 社長・平下氏のインタビュー編で語っていただいています。天草酒造や代表銘柄「池の露」「天草」を今まで知らなかった方も、ぜひ読んでいただけたらと思います。

最後に……この取材に際して、天草酒造のご家族には大変お世話になりました。会長が手塩にかけて育てた無農薬のレタスをモリモリ食べ、会長の奥様が作って下さったアオサのかき揚げも思う存分堪能し……短い時間でしたが地元の生活も体験させていただきました。天草酒造および「新和グッドカンパニーズ」の皆さん、現地でお会いした皆さん、本当にありがとうございました。

[取材・撮影・文・構成] yukiko(ユキコ / 焼酎スタイリスト、ファッションスタイリスト)
[協力] 色彩総合プロデュース「スタイル プロモーション」
※写真の無断転用、二次使用はお断り致しております。ご理解ご協力のほど宜しくお願い致します。

 

【取材にご協力いただいた飲食店】
■焼鳥と全国の銘酒 福みみ本店(店主/寺田さん)
〒860-0807 熊本県熊本市中央町下通1―12―3  高津ビル2F
TEL:080-4138-1433

■ 焼鳥と全国の銘酒 福みみ2号店(店主/熊野さん)
〒860-0807  熊本県熊本市中央区下通り1-6-7  アイアイビル1F
TEL:096-355-2272

■焼酎の御縁 晴 (はる) 
〒860-0806 熊本県熊本市中央区花畑町11-8 TASOGARE西館ビル4F
TEL:090-4998-5551

「新和 de KANPAI」
日時:2017年4月23日(日) 10:00-16:00
会場:天草酒造「池の露」蔵周辺
熊本県天草市新和町小宮地11808

[出店]はまや旅館、ヤマサキ商事、天草 活海老 岡崎、KOMAME cafe、天草大王生産者組合、大多尾漁協、河浦青年同志会、喜久屋、九州活版印刷所、海月、GNK、食の天草 にじ、しんわ夕やけ市場、天慎、中田加工所、福みみ、松岡水産
[主催]新和グッドカンパニーズ

 

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