【東京と地域をつなぐ】「第10回 酒は未来を救う2018」イベントから学ぶ”試飲会”のあり方とは

日本のお酒「國酒」である清酒、焼酎・泡盛、そして日本ワインを含めた約60社が集うチャリティ試飲会「第10回 酒は未来を救う2018」では各蔵の意識や提案力が顕著に現れ、ある傾向が見られていました。横浜港 大桟橋ホールで開催された3月25日のイベントの様子とともに、販促アドバイザーとしても活躍する焼酎スタイリストyukikoさんがお届けします。

子どもたちの未来をサポートするチャリティーイベント

10回目をむかえた今年のチャリティイベント「酒は未来を救う」は、焼酎・泡盛蔵16社、清酒蔵34社、日本ワイン14社の参加により開催されました。試飲会の実費用以外の売上金はすべて寄付先におさめられる試飲イベントです。子どもたちの未来につなげる寄付金にしたい……という主催者の想いから、蔵元や運営スタッフもすべて善意によって運営されています。

寄付先は、がんの子どもを守る会、赤十字子供の家など明確に提示されているため、来場されている一般参加者も「自分たちが試飲するお金が、少しでも世の中の人たちのためになってもらえたら嬉しい」「自分たちがこのイベントに参加する意義も感じている」と、充分にお酒が入って顔を赤くしながらも、”お酒を飲む”という行為以外の意識を認識して参加されている方が大勢いました。

飲食の持ち込みが可能なため、お子さま連れやファミリー層が多いイベントです。今回は819名の来場があり、日本で造られたお酒の数々を楽しまれていました。

清酒、日本ワイン……それぞれの業界意識が行動に表れていた試飲ブース

このチャリティーイベントは焼酎と泡盛、清酒、日本ワインが各業界に分かれてブースを構えています。そのため”日本で造られたお酒”と一言で言っても業界を取り巻く流行や各蔵の意識の違いが顕著に見られるのも特徴のひとつです。

例えば、今回34蔵が参加していた清酒ブースでは”日本酒ブーム”の次につなげようとする意識が各蔵からひしひしと伝わってきました。

清酒「紀土 KID」の製造蔵、和歌山県・平和酒造株式会 山本典正さんは「単なる日本酒ブームで終わらないようにするため、まだまだ清酒蔵も必死です。頑張らないといけないと強く感じています。和歌山県は海と山に囲まれている地域なので、やはり海鮮と山菜との食べ合わせは美味しい。そういう情報をもっと皆さんに知ってもらいたいと思っています。しっかり冷やした状態で飲んでほしい冷酒は、氷でよく冷やしてから来場者の皆さんにお注ぎしています。その方が私たち造り手が提案する美味しさを飲み手の皆さんにもイメージしてもらいやすいですから」

「豊香」を製造する長野県・株式会社豊島屋 林慎太郎さんは「日本酒ブームと言われていますが、清酒業界の力が本当に試されるのは今であり、これからです。こういう試飲会でも自分たちの蔵の個性をきちんと訴えて、お客さまに飲んでもらえるような提案に力を入れています。焼酎と違って、清酒の原料となる米は他県のものを使用することが一般的だけれども、うちは米も長野産のものを使って”テロワール”を追求しています。地元の生産農家に標高360m~1000mのなかで品種を分けて作ってもらっています」

清酒ブースでは、”日本酒ブーム”や”日本酒人気”と呼ばれた勢いを一次的なブームで終わらせないようにしようとする姿勢や熱気がどの蔵からも伝わってきました。一度掴んだファンを逃しては過去のブームと同じことになってしまう……そういった危機感を感じるほどでした。

イベント開始前から氷をあふれるほど入れて一升瓶をしっかり冷やしてから来場客を迎える蔵、温度管理にこだわって燗付けを提案する蔵など、温度帯や飲み方の見本を生産者自らが徹底して行っている姿が見られました。

一方、14社参加した日本ワインのブースは「日本ワイン」という価値をもっと国内で広めていきたいという想いが強く感じられるブースでした。日本でのアルコール飲料の消費が厳しいなかワインは成長産業であり、特に国産のぶどう100%を原料にした「日本ワイン」が海外でも高評価を得てきている背景から「日本ワイン」というブランドの位置づけに力が注がれている業界です。

しかも「日本ワイン」は平成30年10月30日から産地・品種・年号などの表示が適用されることから、日本の市場においても飲み手にとっても明瞭性の高い情報が開示されます。

丸藤葡萄酒工業株式会社は「今までワインといえばヨーロッパやカリフォルニアなど海外が主流で、日本のワインは後追いのような位置づけでした。でも、近年では日本ワインのクオリティーも上がっていて、世界で評価されるようにもなってきています。だからこそ、日本の皆さんにも自国のワインに目を向けてほしい。日本には清酒文化、焼酎文化、泡盛文化が各地域に根付いていますが、日本ワインの文化はこれからだと思っています。その土壌をどんどん開拓して築いていきたいですね」

試飲会で何を伝えたいのか――各蔵の提案力が見えた本格焼酎・泡盛ブース

ブームで終わらせないよう必死な姿を感じた清酒ブース。日本の酒文化、酒類市場において新たな価値とファンを造り出そうとする日本ワインブース。昨年も同イベントを取材していますが、今回は更にその想いが強く伝わってきていました。

そのため、各蔵が試飲会という期間限定の舞台でどのような意識をもって参加しているのか、試飲カップ1杯の提案から読み取れるものになっていました。

本格焼酎は清酒以上に温度帯の幅が広く、割り方によっても香りや味わいの立ち方も変わります。単に「お湯割り」といっても人肌の温度がいいのか熱々の高温がいいのかなど銘柄によって提案の仕方は様々です。

国分酒造株式会社 笹山護さんは「うちの銘柄を燗付けでも飲んでいただきたいと思って今回準備しました。なかなか燗付けをご自宅でする方はいないかもしれませんが、来場される方には飲食店や酒販店の方もいらっしゃるので、そういう1杯の美味しさも知ってもらえたらと。お湯割りとはまた違うまろやかな味わいや香りを試飲会で提案できればと思って、今回燗付けの道具を持ってきました」

国分酒造株式会社に限ったことではなく、どの蔵も来場者に”自信を持っておすすめする美味しい1杯”を届けたいと思っているはずです。自蔵の”ファン”になってもらい、ブームで縁が途切れることのない”継続的なファン”になってほしいはずです。

設備が限られた試飲会場といえども清酒蔵の多くが業界の危機感を持ち、温度管理にも気を配りながら来場者に”1杯の提案”を行っていたように、焼酎蔵がどこまでこだわりを持ち、どこまで再現性を高めて来場者に1杯の試飲カップを手渡していたのか。本格焼酎の美味しさとして浸透させていきたいと蔵元の多くが語る「お湯割り」も、各蔵・銘柄に適した温度帯を再現して来場者に向けて提案されていたのかどうか。

試飲カップ1杯のなかに投影された各蔵の”意識“が顕著に現れていたのが今年の焼酎・泡盛ブースでした。

現在、全国各地で大型の試飲会が行われています。これからも末永い焼酎ファン、泡盛ファンを増やしていくためにも各々の立場で何をすべきか、どこまでこだわるのか。そもそも何を届けたい1杯なのか。業界への応援の意味を込めて、各蔵およびイベント運営者の提案意識と実行力をきちんと見届けて情報発信していきたいと私自身も強く感じるイベント取材になりました。

[取材・撮影・文] yukiko(ユキコ / 焼酎スタイリスト、日本酒スタイリスト、清酒スタイリスト、ファッションスタイリスト)
[協力] 色彩総合プロデュース「スタイル プロモーション」
※写真の無断転用、二次使用はお断り致しております。ご理解ご協力のほど宜しくお願い致します。

 

≪酒は未来を救う〜今、私たちに出来ること〜≫
日時:2018年3月25日(日)13:30-16:00(受付13:00開始)
場所:横浜港 大桟橋ホール
(神奈川県横浜市中区海岸通1-1-4)

寄付先:がんの子どもを守る会、赤十字子供の家、あしなが育英会(東日本大震災遺児支援)、タイガーマスク募金寄付先、東日本大震災被災地児童養護施設 新一年生への入学祝として
主催:NPO法人 酒は未来を救う会

【焼酎・泡盛】壱岐の蔵酒造(長崎県)、豊永酒造(熊本県)、常徳屋酒造場(大分県)、小玉醸造、古澤醸造、渡邊酒造場(宮崎県)、鹿児島酒造、国分酒造、小牧醸造、小正醸造、軸屋酒造、大海酒販(鹿児島県)、多良川(沖縄県)[焼酎協賛]ゑびす酒造(福岡県)、柳田酒造、黒木本店(宮崎県)、大石酒造場(熊本県)

【清酒】八戸酒造、鳩正宗(青森県)、阿桜酒造、新政酒造、福禄寿酒造(秋田県)、阿部勘酒造店、寒梅酒造(宮城県)、曙酒造(福島県)、来福酒造(茨城県)、菊の里酒造、小林酒造(栃木県)、泉橋酒造(神奈川県)、青木酒造(新潟県)、吉田酒造店、御祖酒造(石川県)、武の井酒造(山梨県)、佐久の花酒造、豊島屋、宮坂醸造(長野県)、中島醸造(岐阜県)、土井酒造場(静岡県)、冨田酒造、福井弥平商店(滋賀県)、木下酒造(京都府)、山陽盃酒造(兵庫県)、今西酒造(奈良県)、平和酒造(和歌山県)、吉田酒造(島根県)、今田酒造本店、金光酒造、天寶一、美和桜酒造(広島県)、成龍酒造(愛媛県)、天山酒造(佐賀県)

【日本ワイン】エーデルワイン(岩手県)、高畠ワイン、タケダワイナリー(山形県)、麻原酒造越生ブリュワリー(埼玉県)、麻屋葡萄酒、アルプスワイン、塩山洋酒醸造、くらむぼんワイン、甲府ワインポート、シャトージュン、蒼龍葡萄酒、マルサン葡萄酒、丸藤葡萄酒工業、ルミエール(山梨県)

 

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yukiko / ユキコ
焼酎スタイリスト、ファッションスタイリスト。色彩総合プロデュース「スタイルプロモーション」代表。株式会社永谷園を経て“色が強み”のファッションスタイリストに転身。全国の蔵元らと連携して「焼酎スタイリスト」として日本のお酒「國酒」を“流行×オシャレ”に発信。トレンドや美容情報に精通し、ファッション誌やビューティー誌にも登場。”時流”を掴んだお酒のコメントやアドバイスには定評がある。
蔵元や酒販店・飲食店からの信頼も厚く「蔵元公認 焼酎アンバサダー」「焼酎ナビゲーター」を務め、全国で講演やイベントプロデュース・企業研修も行う。
中小企業庁支援組織「ミラサポ」商業色彩、販促支援専門家。

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