【東京と地域をつなぐ】「焼酎楽宴」から見えた本格焼酎・泡盛業界の可能性

2015年からスタートし、今年で3回目の開催となった「焼酎楽宴」。東京の飲食店と酒販店が毎年交代で開催しているイベントです。今年は飲食店が主体となって、東京・銀座の一等地に一日限りの「東京居酒屋」が開店!その会場に焼酎スタイリストyukiko(ユキコ)が伺いました。

 

焼酎を盛り上げていこう!――飲食店だからこそできる、本格焼酎の提案

5月21日(日)に銀座・Blue Lily(ブルーリリー)青百合飯荘で焼酎イベント「焼酎楽宴」が開催されました。

このイベントは、「焼酎を盛り上げていこう!」と東京の飲食店と酒販店がタッグを組み、毎年担当を交代しながら展開している焼酎イベントです。3回目となる今回は、初回同様に飲食店が主体となって企画から運営まで行っています。

当日は飲食店30店が参加し、酒販店10店がサポート。250名の焼酎好き参加者が、着席式で6品のコース料理を食べながら焼酎が味わえるスタイルです。

前菜とデザートは飲食店がイベントのために準備した「焼酎楽宴」オリジナルメニュー。飲食店だからできる提案を――業態の特色を活かした焼酎の楽しみ方が盛り込まれていました。

(焼酎楽宴オリジナルの前菜盛合せ)蛸の柔らか煮、鶏ハムの蜂蜜芥子漬け、天豆ひすい煮、パプリカピクルス、ちんすこう天ぷら、管牛蒡 明太射込み、クリームチーズ味噌漬け。デザートには黒糖焼酎漬けクランベリームース 黒糖ジュレが出されました。

(オリジナルグラス)右が昨年版、左が今年の参加者に渡されたもの。お湯割り用にも。

 

焼酎ファンの裾野を広げたい――その想いが生む効果

各テーブルに蔵元が1名付き、参加者は30分かけてじっくりとその蔵の焼酎を味わうことができます。このスタイルには飲食店側が参加者への提案として「馴染みのある焼酎や泡盛以外に、新たな蔵のファンにもなってほしい」という想いも含まれています。

30分おきに蔵元がテーブルを移動し、参加者は1日で5蔵の話を聞けます。参加者にとっては、もしかしたら自分が飲んでいる銘柄の蔵元や自分が応援している蔵元に会いたい本音もあるのでは?……あえて質問をしてみました。

すると、多くの参加者から「普段飲まない銘柄の良さを知ることができた」「新たな蔵元を知るきっかけになったので、応援したい蔵が増えた」との声が。年間を通して焼酎イベントに参加している方は「馴染みのある蔵元とは他のイベントでも話せる機会があるだろうから、自分の視野を広げるためにも今回のようなスタイルがあってもいいかな」と率直に語ってくれました。

今回の取り組みは、焼酎イベント常連の方も、焼酎初心者の方も知見を広げる焼酎イベントになったようです。

新たな焼酎を知り、新たな蔵の魅力を把握することは、単に「焼酎を飲む」という行為だけではなく、「またあの銘柄を飲んでみよう」というきっかけになったり「あの蔵へ行ってみよう」と観光や現地への興味にもつながります。

もともとは「焼酎を楽しんで飲んでほしい」と飲食店と酒販店の純粋な想いによって企画されているイベントですが、参加者が焼酎の新たな楽しみ方を増やすきっかけになれば、焼酎ファンの裾野もさらに広がっていくことでしょう。焼酎業界のこれからを見届けたくなる光景でした。

 

蔵元の励み――つくり手を支えるものとは

各テーブルも4、5順目になり、赤ら顔になった参加者が増えた頃、蔵元にもお話を伺えました。

本格焼酎「青一髪」製造元 / 久保酒造場(長崎県)  久保氏

「美味しそうに自分の手がけた焼酎を飲んで下さっている姿を見ていると、これからの仕込みも頑張ろうと励みになります。仕込みの時期は蔵にこもって作業をすることが多くて、ストイックにもなりますし、どうしても一点集中の考え方に陥ってしまいがち。心が折れそうになることもあります(笑)。

イベントで皆さんから意見をお聞きして情報交換ができていると、仕込みの時期にその言葉をふと思い出すんです。発想が広がったり、飲んで下さる方のために頑張ろうと意識が高まります」

琉球泡盛「春雨」製造元 / 宮里酒造所(沖縄県)  宮国氏

「皆さんから率直な感想が聞けました。もっと東京に滞在していたいところですが(笑)、今日20時台の飛行機で沖縄に帰ります。うちの会社では月曜日から金曜日までの1週間を一連の流れとして製造しているため、週始まりの月曜は現場にいないといけないんですよ。皆さんからいただいた感想を励みにさらに美味しい泡盛をつくろうと思います。明日からまた頑張れます」

イベントは蔵元にとって、エンドユーザーである参加者からじかに感想を聞ける貴重な時間。そして、皆さんとのコミュニケーションによって“造りに向かう力”も蓄えているのです。

 

来年の「焼酎楽宴」は、酒販店がメイン!

飲食店が主体となって展開された「焼酎楽宴」。今回は30代前後の若手メンバーの活躍も目立ってきました。

このウェブマガジン「焼酎&泡盛スタイル-shochu&awamori STYLE-」のプロフェッショナルサポーターでもある布施氏も、そのうちのひとり。

「焼酎楽宴は、私たちの先輩にあたる飲食店・酒販店の皆さんがつくりあげてきたものです。自分が目標とする先輩たちの背中を見ながら、若手のメンバーとしてイベントに関われたことはとても光栄です。みんな、焼酎を楽しんでほしいという想いで準備してきました」

サポートにまわっていた酒販店の皆さんにも良い刺激になっているようです。

酒販店の若手メンバーは「来年は自分たち酒販店がメインで焼酎の楽しさを伝えていく番です。今回のイベントを見て、来年どのように展開していこうかとすでにイメージを湧かせています」

今回の「焼酎楽宴」では、協力し合いながら蔵元を支え、切磋琢磨する飲食店、酒販店の姿がありました。業態の垣根を越えた効果的なつながりが見られ、エンドユーザーにとっても「焼酎って楽しい」「泡盛って美味しい」と素直に思える時間になったのではないでしょうか。これからの焼酎・泡盛業界の発展を支える飲食店と酒販店にも期待したくなるイベントでした。

 

焼酎スタイリスト yukiko のリアルトーク

焼酎スタイリストとして「生産者(蔵元)―酒販店・飲食店―メディア―エンドユーザー」が波紋のように広がり繋がるコミュニケーションを理想と考えて活動しています。今回のイベントを取材していて随所に感じたのは、飲食店・酒販店・蔵元、さらにエンドユーザー(参加者)の役割が明確だったことです。

そのため、私自身も焼酎スタイリストとして、“メディア”としての役割は何なのかを会場を見渡しながら考えていました。東京と地域をつなぎ、日本の伝統文化産業である焼酎と泡盛をもっと多くの方に楽しんでもらうために、このウェブマガジン「焼酎&泡盛スタイル-shochu&awamori STYLE-」が担う役割は何なのか……それを意識しながら取材に入り、執筆しました。

今回“メディア”の立場として参加し、とても嬉しかったことがあります。

私が取材で入っていることに気づいた飲食店・酒販店・蔵元、そして参加者の皆さんが「ユキコさん、あのエリアに〇〇さんがいるよ」「この焼酎、ユキコさんも試飲したほうがいいよ」「蔵元を囲んだ写真を撮ってよ」など、取材しやすい状況をつくって下さっていました。

すべてのテーブルをまわることはできなかったのですが、皆さんとの連携プレーのおかげで撮った枚数も写っている方も多く、掲載にふさわしい写真の多いこと!!……今回、写真選定に悩みました(笑)。そこで、飲食店主催者代表・髙橋研さんのインタビューは続編にてたっぷり掲載することにします。(皆さんの写真も加えます!)

「生産者(蔵元)―酒販店・飲食店―メディア―エンドユーザー」がつながるコミュニケーション。私も“メディア”の立場として、皆さんと良きコミュニケーションが取れて、良き情報をお届けできるように努めていきたいと思います。

「焼酎&泡盛スタイル-shochu&awamori STYLE-」の記事も、色々な方が登場される予定です。飲む楽しさ、食べる楽しさの他にも、焼酎と泡盛について”読む楽しさ”も多くの方にお届けできたら嬉しいです。

イベント関係者、蔵元、参加者の皆さん、ありがとうございました。

[取材・撮影・文・構成] yukiko(ユキコ / 焼酎スタイリスト、ファッションスタイリスト)
[協力] 色彩総合プロデュース「スタイル プロモーション」
※写真の無断転用、二次使用はお断り致しております。ご理解ご協力のほど宜しくお願い致します。

 

≪東京居酒屋 焼酎楽宴≫
日時:2017年5月21日(日)11:30-15:00
場所:Blue Lily(ブルーリリー)青百合飯荘
(東京都中央区銀座4-6-1 三和ビルB2F)

【参加蔵元】 八丈興発(東京都)、ゑびす酒造(福岡県)、常徳屋酒造場、藤居醸造、ぶんご銘醸、四ツ谷酒造(大分県)、重家酒造、久保酒造場、五島灘酒造(長崎県)、黒木本店、小玉醸造、佐藤焼酎製造場、松露酒造、古澤醸造、柳田酒造、渡邊酒造場(宮崎県)、寿福酒造場、天草酒造、豊永酒造(熊本県)、植園酒造、宇都酒造、大石酒造、尾込商店、国分酒造、小牧醸造、小正醸造、櫻井酒造、佐多宗二商店、佐藤酒造、白石酒造、大海酒造、高崎酒造、田村合名会社、知覧醸造、中村酒造場、西酒造、万膳酒造、村尾酒造、大和桜酒造、本坊酒造、有村酒造、富田酒造場、山田酒造(鹿児島県)、宮里酒造所(沖縄県)

 

 

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