【焼酎&泡盛スタイル対談】今、知っておくべき焼酎業界の魅力 /「焼酎楽宴」飲食店代表・髙橋研さん×焼酎スタイリストyukiko
飲食店と酒販店が集結し、共同開催している本格焼酎・泡盛イベント「焼酎楽宴」。今回メインを務めた飲食店の代表者 髙橋研さんに「焼酎楽宴」実施のきっかけ、直面した課題などを伺いました。今後、全国で行われる焼酎イベントの参考になるコメントが満載です!本格焼酎をとりまく環境が活性化している今だからこそ着目したい「蔵元-酒販店・飲食店-メディア-エンドユーザー」の“効果的なつながり”。焼酎スタイリストyukikoとの対談で飲食店の立場から語っていただきました!
【profile】 髙橋 研 / Takahashi Ken
1968年生まれ、東京都出身。15歳から和食・洋食をはじめ、料理人として飲食業に携わる。20代終わりに本格焼酎に目覚め、1999年渋谷に居酒屋「五臓六腑」をオープン。現在は三軒茶屋に4店舗展開。2016年9-10月放送NHK焼酎特集で講師を務める。「焼酎楽宴」ではイベント発起人のひとりであり飲食店代表者。
飲食店と酒販店の共同開催「焼酎楽宴」。始めたきっかけとは?
(yukiko)まずは、本格焼酎と泡盛のイベント「焼酎楽宴」を始めたきっかけを教えて下さい。
(髙橋さん)「焼酎楽宴」が始まったのは2015年です。イベントの構想としては、前回の焼酎ブーム(2004年頃ピーク)が次第に下火になってきた頃から「このままではいけない」という危機感があって……。私の周りの飲食店だけではなく酒販店も同じ想いをかかえていました。
飲食店、酒販店、業態の垣根を越えて同じ想いを持ったメンバーで「多くの人に、焼酎をもっと楽しんで飲んでほしい」という純粋な気持ちで集まったのが始まりです。
一方で、飲食店ごとに取り引きしている酒販店が違うため、特に東京の場合は、飲食店と酒販店がひとつの集合体になってイベント開催をするのが難しくて……クリアしなければいけない課題が色々とありました。
(yukiko)具体的にはどのようなことですか?
東京は同じ地域の飲食店でも取り引きしている酒販店が東京中に混在しているため、地域ごとにまとまるのが困難だったんです。飲食店、酒販店それぞれ取り扱い銘柄も違いますし、取り引きのバランスもあります。イベントでどの蔵元に協力してもらうのか、どの銘柄を扱うのかなど、みんなの流通状況を考慮しながら開催しなければいけませんでした。
(yukiko)その課題をどのように克服したのですか?
(髙橋さん)酒販店、飲食店それぞれの流通環境や業態関係なく、エンドユーザーに向けて「焼酎を楽しんで飲んでほしい」という純粋な気持ちを貫いて行動できる仲間が集まったことですね。私は1999年に自分の店を出したんですが、その頃から一緒に焼酎に力を入れていた飲食店や酒販店仲間が、前回の焼酎ブームが過ぎても同じように焼酎で頑張っていました。
そして、構想期から実施に至るまでの年月で、自分たちの次の世代も育って、同じ想いを持った仲間が増えたことも大きいと思います。
(yukiko)確かに、國酒に対して熱心な30代前後の飲食店経営者も多いですよね。しかも皆さんにお話を伺うと、口をそろえて髙橋さんたち先輩の名前が挙がります。先輩たちの背中を見て育ってきた若手が、年齢的にもキャリアとしても焼酎業界を引っ張っていく人材に成長してきた証拠なのではないでしょうか。
(髙橋さん)そうなんです。飲食店も酒販店も、そして蔵元も30代の層が育っています。前回の焼酎ブームの真っただ中にいた私たち世代と、次の焼酎ブームを牽引する若手世代……業界を支える層が厚くなっていて、今後の焼酎業界の可能性を示すものだと感じています。
(yukiko)このウェブマガジン「焼酎&泡盛スタイル」は「生産者(蔵元)-酒販店・飲食店-メディア-エンドユーザー」のつながりが波紋のように広がるコミュニケーションを大切に情報発信しています。その意味でも、皆さんが築かれている関係は読者(エンドユーザー)に伝えるべき良質な情報だと捉えています。
(髙橋さん)ぜひyukikoさんのメディアの立ち位置を活かして、今の焼酎業界を伝えて下さい(笑)。「焼酎楽宴」に来られなかった方にも、この記事を通して蔵元、酒販店、飲食店それぞれの活躍が届いていたら嬉しいですし。
(yukiko)全国に向けて、皆さんの活躍や業界の現状を伝えるのがこのサイトの役割なので、私も頑張ります(笑)。
さらに……プラスαの力を見せた、今年の「焼酎楽宴」
(yukiko)「焼酎楽宴」は1年ごとに飲食店と酒販店でメインが交代して運営されていますよね。飲食店の立場として初回の「焼酎楽宴」と比べていかがですか?
(髙橋さん)初回はかなり大変でしたね(笑)。自分たちは飲食店であり居酒屋なので、会場を借りて“居酒屋をやりたい”と思っていました。料理もすべて自分たちでコース料理を作り、お客様が注文したお酒をお出しする……一般的な居酒屋形式のイベントです。
自分たちの頭の中では日々の業務の延長線としてできると思っていたんですが、料理は何とか間に合わせてもドリンクが追い付かなくて。途中で蔵元にも協力してもらって、予定していた内容を変更して当日を乗り切りました……。だから、今回は自分たちがやりたいことを詰め込むのではなくて、「お客様に迷惑をかけないためにどうしたらいいか」を考えましたね。
(yukiko)準備期間はどれくらいですか?
(髙橋さん)初回の時は1年以上かけて準備していましたが、前回の経験もあったので半年前からですね。私たち発起人から一番近い人たちが打ち合わせをして、まずは軸を作りました。そこから参加店に情報を伝えていきました。
今回、若手メンバーが軸となる部分に加わったのが最大の強みになりましたね。私たちの世代はパソコンを使った業務がとにかく苦手(笑)。焼酎に対して熱い想いを持った有能な若手メンバーが入ってきてくれたことによって、チケットの準備やメール連絡など細かな業務までスムーズになりました。
彼らだってそれぞれ営業店があるのに、業務の合間に資料を作成して飲食店に配布したり、サポート側の酒販店と連携を取ったり。知らない間にマニュアルもできていてびっくりしたほどです(笑)。
(yukiko)先輩方が若手の能力を信頼して、活躍できる場を作って下さっているのも大きなポイントなのでは?
(髙橋さん)頼もしく思えるくらいみんなが頑張ってくれています。250名規模のイベントなのに、イベント当日もスムーズすぎて私の仕事がないほどです(笑)。酒販店とも上手に連携を取ってくれています。
(yukiko)酒販店と飲食店の関係は、普段は私たちエンドユーザーには見えないものです。蔵元が丹精込めて造った焼酎が、どのような人たちを経て私たちの手元に届くのか……酒販店と飲食店の良好な関係を実際に見ることによって、私たちはお酒に対する“安心感”を覚えます。お酒から伝わる“1杯の価値”も変わると思うんです。
(髙橋さん)確かにそうですね。焼酎イベントや利酒会の多くは、飲食店と取り引きのあるひとつの酒販店がサポートに入って開催されています。もちろんそのような活動も大切です。「焼酎楽宴」は、あえてそれを無くして「焼酎を応援しているんだったら、同じ想いで共同発信しようよ」というのがもともとの考え方なので、いつもとはまた違った人たちとの出会いがあるかもしれません。
(yukiko)「焼酎楽宴」は、業態の垣根を越えて複数の蔵元、酒販店、飲食店が“複合体”となって展開されているからこそ、私たちエンドユーザーにとっては普段見られない“業界”の現状を実際に見ることができ、感じ取れる場でもあると思うんです。
(髙橋さん)今回のように、若手の活躍をエンドユーザーの皆さんに見てもらえる場でもあります。私たちも“焼酎で生きてきた”ので、業界のこれからを応援しています。「焼酎楽宴」を通して焼酎の美味しさや楽しみを認識してもらったり、若手の活躍を期待してもらえたら嬉しいですね。それがみんなで業界を応援することにつながりますから。
髙橋研さんがおすすめする、焼酎の楽しみ方とは?
(yukiko)焼酎をこれから知りたいという方に向けて、どのような楽しみ方をおすすめしますか?
(髙橋さん)今だと“炭酸割り”ですね。今は炭酸割りが定番化してきて、なかにはコーラで割る人もいるようですから、時代とともに楽しみ方が変化してきていますよね。
私がお店を始めた1999年頃、東京では焼酎の飲み方がまだ浸透していなくて、お湯割りの美味しさが今ほど広まっていませんでした。私としては、焼酎文化圏に根付いているようなお湯割りの美味しさを皆さんに伝えたかったのですが、ウィスキーのようにロックや水割りで飲む方がとても多かったんです。
私自身、当時は水かお湯以外で割ることに少し抵抗がありました。今は、炭酸などで割ったとしても、焼酎を飲んで下さるのであればそういう楽しみ方もあっていいのかなと捉えています。焼酎を飲み続けてくれたら、いずれはお湯割りやロックなど焼酎本来の美味しさが伝わる飲み方も試してもらえるのではないか、と。
お酒が弱い方は薄く割れますし、まずは自分の体質や好みに合った飲み方を見つけてほしいです。
(yukiko)では、これから本格焼酎や泡盛に力を入れていきたいと考える飲食店に向けて、アドバイスをいただけますか?
(髙橋さん)焼酎は銘柄によって、熱いお湯割りが適したものもあれば、ゆるく作った方が適しているものもあります。焼酎は冷たくすると香りや甘みが閉じてしまうものが多いので、お湯割りで開く美味しさをもっと多くの方に感じてもらえるような環境が広まってほしいと考えています。
飲食店の場合は、お店ごとのやり方で構わないので“こだわり”を持つと良いのではないでしょうか。焼酎だけではなくて、お店自体にもお客様から興味を持ってもらえるようになるでしょうし、飲食業のやりがいにもつながります。
焼酎の波は来るか?今だから注目してほしい、焼酎業界の“面白さ”
(yukiko)飲食店の立場から、日本酒に続いて焼酎も勢いづいてきている実感はありますか?
(髙橋さん)エンドユーザーの耳に日本酒やワインの話がたくさん聞こえてくるから「焼酎は落ちた」とか「ブームが過ぎた」と解釈してしまっただけで、実はそんなことないのかなと感じる部分もあります。焼酎ブーム以前は特定地域の人たちが飲んでいたお酒だったのに対して、現在は焼酎を飲む人たちが全国にいて裾野が広がっています。そういう意味では減っていないのではと。
ここ数年で30代の蔵元が先陣を切って頑張っています。「焼酎楽宴」が始まる2015年以前は、彼らのお父さん世代の蔵元が焼酎イベントに出ていたのですが、世代交代がなされている蔵が増えてきています。
どの蔵も美味しい焼酎を造っていますし、頑張っている姿を見ていると応援したくなります。蔵元、酒販店、飲食店それぞれの業態で、業界を支える人材が充実してきているのが今の焼酎業界です。“縦のつながり”が世代交代を経てさらにしっかりしてきました。
(yukiko)そして、“横のつながり”も活発ですよね。
(髙橋さん)そうですね。例えば、蔵元同士の横のつながりも活発です。伝統文化産業なのでもともとは閉鎖的だったのかもしれませんが、今は互いの取り組みを尊重し、蔵に足を運んだり情報交換している蔵も増えてきています。個々の力がまだまだ伸びる要素を秘めています。だから焼酎業界もまだまだ伸びますよね。
(yukiko)私もそう思います。若手の皆さんがそれぞれの業態で力を発揮しているので、焼酎業界の“機が熟す時”が必ずやってきます。それを私はメディアの立場としてちゃんと見届けたいですし、エンドユーザーに伝えていきたいと思っています。
(髙橋さん)ドカーンと行くのは何かきっかけがないと無理ですが、徐々にまた焼酎が着目されるのは、そう遠い話ではないですよね。世の中が健康志向になると、糖分やコレステロールが気になりますし、そういう時には糖質ゼロ、プリン体ゼロである焼酎にはスポットが当たりやすいですから。
(yukiko)最後に「焼酎&泡盛スタイル」読者の皆さんにコメントをお願いします。
焼酎業界は、30代を筆頭に若手世代が積極的に業界を引っ張ってくれていて、期待できる人材が大勢います。さらに最近では20代の蔵元が力をつけてきているので、彼らの活躍も楽しみです。焼酎の楽しみとして、焼酎本来の美味しさを味わってもらいたいのはもちろんですし、台頭してくる20代の若手蔵元、酒販店、飲食店など、各業態の“層の厚さ”にも注目してもらえると面白いと思います。
(yukiko)髙橋さん、お忙しいところありがとうございました!
焼酎スタイリスト yukiko のリアルトーク
このウェブマガジン「焼酎&泡盛スタイル」は、「生産者(蔵元)-販売店・飲食店-メディア-エンドユーザー」の関係が波紋のようにつながり広がるコミュニケーションを理想としています。蔵元・酒販店・飲食店の効果的なつながりや今後期待してほしい部分を、”メディア”の役割としてエンドユーザーの皆さんに伝えられたらと思い、イベント編とインタビュー編を分けて執筆しました。
今回、髙橋研さんから実際にお話を伺ってひしひしと感じたのは、若手がのびのびと活躍している姿を本心から喜んでいるお気持ちでした。業界の先輩からここまで期待をかけてもらっていたら、後輩の皆さんもきっと嬉しいだろうと思います。
私は焼酎スタイリスト&ファッションスタイリストとして活動していますが、商業色彩の分野で企業研修トレーナーおよびアドバイザーを務めています。様々な企業に伺うなかで、若い世代が活躍して効果を生んでいる組織には、若手が自分の考えを率直に述べられて能動的に行動できる環境が存在します。そして後輩を信頼し、温かく見守る先輩の姿があります。今の焼酎業界がそれに近くなってきているのです。
焼酎に関わる人たちの「焼酎を楽しんで飲んでほしい」という純粋な気持ちからスタートした「焼酎楽宴」。まだまだ微力ですが、私の”メディア”としての役割が少しでも皆さんのお役に立てるのなら光栄です。
焼酎の楽しみ方として、飲んで楽しみ、「焼酎&泡盛スタイル」を読んで楽しみ、そして日本の伝統文化産業の”将来”に楽しみを見出していただけたら嬉しく思います。
今回の取材に際し、髙橋研さん、イベント関係者、蔵元、参加者の皆さん、ありがとうございました。
[取材・撮影・文・構成] yukiko(ユキコ / 焼酎スタイリスト、ファッションスタイリスト)
[協力] 色彩総合プロデュース「スタイル プロモーション」
※写真の無断転用、二次使用はお断り致しております。ご理解ご協力のほど宜しくお願い致します。
≪東京居酒屋 焼酎楽宴≫
日時:2017年5月21日(日)11:30-15:00
場所:Blue Lily(ブルーリリー)青百合飯荘
(東京都中央区銀座4-6-1 三和ビルB2F)
【参加蔵元】 八丈興発(東京都)、ゑびす酒造(福岡県)、常徳屋酒造場、藤居醸造、ぶんご銘醸、四ツ谷酒造(大分県)、重家酒造、久保酒造場、五島灘酒造(長崎県)、黒木本店、小玉醸造、佐藤焼酎製造場、松露酒造、古澤醸造、柳田酒造、渡邊酒造場(宮崎県)、寿福酒造場、天草酒造、豊永酒造(熊本県)、植園酒造、宇都酒造、大石酒造、尾込商店、国分酒造、小牧醸造、小正醸造、櫻井酒造、佐多宗二商店、佐藤酒造、白石酒造、大海酒造、高崎酒造、田村合名会社、知覧醸造、中村酒造場、西酒造、万膳酒造、村尾酒造、大和桜酒造、本坊酒造、有村酒造、富田酒造場、山田酒造(鹿児島県)、宮里酒造所(沖縄県)
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焼酎スタイリスト®、ファッションスタイリスト。色彩総合プロデュース「スタイルプロモーション」代表。株式会社永谷園を経て“色が強み”のファッションスタイリストに転身。全国の蔵元らと連携して「焼酎スタイリスト®」として日本のお酒「國酒」を“流行×オシャレ”に発信。トレンドや美容情報に精通し、ファッション誌やビューティー誌にも登場。”時流”を掴んだお酒のコメントやアドバイスには定評がある。
蔵元や酒販店・飲食店からの信頼も厚く「蔵元公認 焼酎アンバサダー」「焼酎ナビゲーター」「泡盛スタイリスト®」「日本酒スタリスト®」なども務め、全国で講演やイベントプロデュース・企業研修を行う。大学の非常勤講師として教育分野でも活躍。(専門:販促色彩・ビジュアルプロモーション・ブランド構築・伝統文化産業)
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