福岡 「GI本格焼酎・泡盛オンラインシンポジウム」ー焼酎スタイリストのイベントレポート

壱岐・球磨・薩摩・琉球GI(地理的表示)本格焼酎・泡盛オンラインシンポジウム焼酎スタイリストyukikoさん取材・東京から情報発信マガジン「焼酎&泡盛スタイル」

福岡県で開催された「GI(地理的表示)本格焼酎・泡盛オンラインシンポジウム from九州・沖縄」のイベントレポートをお届けします。取材は“時流”に合った國酒の提案を行っている焼酎スタイリストyukikoさんが担当してくれました。ご自身も大学や教育機関で講師として登壇し、伝統文化産業や地域産業について語ることも多いそうです。焼酎や泡盛初心者さんにも分かりやすいように日本のお酒「本格焼酎・泡盛」の今とこれからをレポートしてくれています。

シンポジウムに参加した方も復習や追加情報としてぜひご覧下さい。最後には、今回パネラーを務めた方々からウェブマガジン「焼酎&泡盛スタイル」読者の皆さんにメッセージもいただいています。お酒を飲むシーンで参考にしてみて下さいね!

GIを知っていますか?Made in Japanブランドを活性させる注目の制度

壱岐・球磨・薩摩・琉球GI(地理的表示)本格焼酎・泡盛オンラインシンポジウム焼酎スタイリストyukikoさん取材・東京から情報発信マガジン「焼酎&泡盛スタイル」

焼酎スタイリストyukikoです。3月20日(土)福岡県で開催された「GI(地理的表示)本格焼酎・泡盛オンラインシンポジウム from九州・沖縄」は、全国43都道府県、アジア・アメリカ・ヨーロッパを含む400名が参加されました。

GI(地理的表示)とは「Geographical Indications」の略で、地域の共有財産である「産地名」の適切な使用を促進する制度です。代表的な例が発泡性ぶどう酒「シャンパーニュ」です。フランスのシャンパーニュ地方で生産され、さらに一定の基準や品質を満たしたものを指します。

シンポジウム冒頭に、福岡国税局 局長の後藤健二さんよりGI制度について語られました。「GIは、お酒が“正しい産地”であること、“一定の基準“を満たして生産されたことを表すものです。本格焼酎と泡盛に関しては壱岐・球磨・薩摩・琉球の4つが指定されています」

日本の蒸留酒文化は、15世紀頃にタイから東南アジアや中国を経て、琉球王国に伝来し、九州に広まったという説があります。現在、本格焼酎・泡盛は約99%が九州と沖縄で製造されています。このような点からも今回の4つの地域を知ることによって、日本の蒸留酒「本格焼酎・泡盛」について理解や楽しみ方がより深まることでしょう。このイベントレポートはシンポジウムに参加された方には復習として、参加できなかった方には本格焼酎・泡盛の“今”を感じて、ご自身の「美味しい1杯」につなげていただけたらと思います。

なお、現在、本格焼酎・泡盛業界は「日本の伝統的な蒸留酒」として2つのポイントに力を入れて動いています。①国内の消費拡大、②輸出拡大を進めていくこと。本格焼酎・泡盛の認知度とブランド力の向上を目的とした取り組みが国税庁と一緒になされています。そのため地酒でもある本格焼酎・泡盛におけるGI制度は、地域活性の観点からも大きな役割を担うことになります。

「今回がきっかけになって、皆さんにも応援団になってほしい」という福岡国税局 後藤さんのメッセージを添えて、シンポジウムがスタートしました。

壱岐・球磨・薩摩・琉球GI(地理的表示)本格焼酎・泡盛オンラインシンポジウムカクテル・東京から情報発信マガジン「焼酎&泡盛スタイル」

日本ソムリエ協会会長 田崎真也さんが語る「GI制度と本格焼酎・泡盛の魅力」

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第一部は日本ソムリエ協会会長の田崎真也さんがGI制度の成り立ちや今後の展望、本格焼酎と泡盛の魅力について語る基調講演です。「GIの起源はヨーロッパにおいてポルトガルのポートワインです。原産地呼称を保護する観点で1756年に造られたのがはじまりで、次第にヨーロッパ全土に広がっていきます。GIは飲み手の皆さんにとっても正しい産地、品質の一定化で安心して買える目印になります」とアドバイス。

「模倣品との差別化・ブランドの保護」を行うことで生産者を守り、地域活性化につながり、地元に誇りを持つきっかけになることも強調して話されていました。

GIに認定されている本格焼酎と泡盛の魅力としては、田崎さんから“食中酒”であるということが挙げられました。「食事という時間の中で飲むので、ウイスキーやブランデーのように度数が高いと食中酒には厳しいんです。本格焼酎や泡盛は水で割っても、お湯で割ってもお酒本来の風味も保たれ、料理の旨みや風味を損ねないアルコール度数になります。そのため、カクテルにもできると思っています。」

壱岐・球磨・薩摩・琉球 — 4つのGIを地域別に紹介!—

壱岐・球磨・薩摩・琉球GI(地理的表示)本格焼酎・泡盛オンラインシンポジウム焼酎スタイリストyukikoさん取材・東京から情報発信マガジン「焼酎&泡盛スタイル」

第一部ではオンライン酒蔵見学、パネラーによるディスカッション、オンライン試飲が行われました。さらに第三部になるとカクテルセミナーと続き、参加者も4つの地域のお酒を実際に飲んで楽しめるお待ちかねの時間です。

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今回カクテルセミナーでカクテルレシピを監修した南雲主于三さんは「過去の本格焼酎と泡盛はカクテルにするのに難しい部分がありましたが、ここ数年で使用しやすくなってきました。これからは色々な楽しみ方が広がるのではないかと思っています」とコメントをくれました。

ここからは、第二部と第三部で語られた内容を地域別に紹介します。パネラーによる説明と南雲さんのおすすめポイント、会場で試飲した私の感想もそれぞれ載せていますので読者の皆さんも参考にして下さい。

 

① 壱岐(長崎県)

壱岐は古代から大陸との文化が盛んだった地域です。約500年前に蒸留技術が伝わりました。明治の酒税法前には蔵元が50社あったと伝えられていますが1984年(昭和59年)に7社になりました。壱岐焼酎は麦焼酎ですが、米麹を使うのが特徴です。もともとこの地域は米焼酎が造られていたのですが江戸時代になると米が年貢の対象になり高価になったことから、年貢対象外だった麦を代用して焼酎を造るようになりました。

昔から酒造りで大事になるのは“麹”であるという意味の「一麹、二酛、三造り」という言葉があるように、一番大事な麹の部分は伝統的な製法である米麹を今でも使っています。その文化が認められてGIに指定されました。「麦焼酎発祥の地」でもあります。

【GI壱岐 原料 】
麦…大麦のみ
麹…米から製造された米麹のみ(もろみに用いる概ねの重量比 麹1:大麦2)
水…壱岐市内で採取するもの

【試飲酒・おつまみ】  麦焼酎「壱岐っ娘」ソーダ割り  × いりこ煮
(パネラー石橋さん)炭酸から入れるとガスが抜けやすいので、先に焼酎をグラスに注ぐのがポイント。今回は焼酎4:炭酸6で。グラスを斜めにするとガスが抜けにくくなるので美味しく飲めます。

【カクテル】  Mugi Julep  / 麦焼酎「壱岐の華」使用
(南雲さん)麦焼酎に甘夏マーマレードを用いたカクテル。壱岐焼酎の特徴はパンを焼いたような香りがすることなので、パンに合うものなら壱岐焼酎も合うのではと思ってマーマレードを用いました。

yukikoの試飲コメント・壱岐

大分むぎ焼酎は麦麹を使用するため麦の香ばしさがしっかり届いてきますが、米麹を使用している壱岐焼酎は米のふくよかさや甘みも一緒に感じられます。いりこ煮の糖分と相性が良かったです。カクテルはマーマレードにすることで柑橘系を濃縮させた甘みと焼酎とのバランスが美味しくいただけました。柑橘系の爽快感もあって、焼酎が苦手な人には飲みやすいと思います。

 

② 球磨(熊本県)

熊本県南部にある球磨郡および人吉市で製造された米焼酎のことを「球磨焼酎」といいます。この地域は盆地で水田が多い米どころです。霧深く寒暖差が大きいため甘みのある香りの良い米ができます。現在、球磨川沿いに焼酎蔵が27蔵あります。常圧蒸留したものは個性が強く香ばしさもありますし、減圧蒸留は軽やかでさわやかな甘みを感じるお酒に仕上がっています。蒸留や貯蔵の方法で様々な楽しみ方ができるため、それぞれに合った料理の提案にも力を入れているそう。

【GI球磨 原料】
米…国内産
麹…国内産米から製造された米麹のみ
水…球磨郡または人吉市内で採取したもの

【試飲酒・おつまみ】  米焼酎「繊月」お湯割り ×  燻製豆腐
(パネラー堤さん)焼酎6:4お湯の割合で、お湯を先に入れます。お湯によって香りも立ち、米焼酎の柔らかさも感じられるようになります。糖分ではない米焼酎が持つ甘みを感じてもらえたらと思います。

【カクテル】  Kome Colada  / 米焼酎「極楽」使用
(南雲さん)今回はフローズンマンゴーと生クリームを使ったカクテルにしました。米焼酎は長期熟成による甘みがあって、アミノ酸がしっかり感じられる銘柄を選びました。

yukikoの試飲コメント・球磨

燻製豆腐はチーズのように食べることができ、しかもチーズよりも後味がすっきりしていて食べやすく美味しかったです。現在、大豆製品は注目されているフードのひとつ。球磨人吉地域の人たちにとって伝統食でありながら、今回、現代人のニーズに近い要素を持ったおつまみの提案がなされていました。 “時流”を踏まえて東京から情報発信する私としても、「焼酎&泡盛スタイル」読者の皆さんに紹介したくなるおつまみでした。会場で熊本県の伝統的な酒器「ガラ」と「チョク」で楽しめたことも球磨焼酎の文化を感じられ、取材していて楽しかったです。
カクテルに関しては、生クリームのコクと常圧蒸留・長期貯蔵による深みとのバランスが楽しめて美味しかったです。

 

③ 薩摩(鹿児島県)

鹿児島県はシラス台地で、もともと米が作りにくい土壌です。約300年前に島津藩が救荒作物としてさつまいもを普及させました。鹿児島県の焼酎文化はハンデを乗り越えてきた歴史を持っています。明治時代までは原料を一度にまとめて仕込む「どんぶり仕込み」が主流でしたが、暑い鹿児島の気候に合わせて製法が確立され、現在の二次仕込みが主流になっています。

【GI薩摩 原料】
さつまいも…鹿児島県産(※)
麹…米麹または鹿児島県産(※)のさつまいも麹
水…鹿児島県内(※)で採取したもの
(※)奄美市および大島郡を除く

【試飲酒・おつまみ】  芋焼酎「伊勢吉どん」ソーダ割り × 焼キビナゴ丸干し
(パネラー小牧さん)鹿児島はお湯割りの文化も根付いていますが、今は飲み方も多様化しているので炭酸割りを紹介しました。割り方は焼酎4:炭酸6です。芋のふくよかな香りが時間経過とともに変わってくるところを楽しんでもらえたらと思います。

【カクテル】  Royal Milk Potato Tea  / 芋焼酎「小鶴黒」使用
(南雲さん)芋焼酎のお湯割りが美味しいのは焼酎に含まれる油分が温めることによって溶け込むため。芋焼酎のホットカクテルは向いているといえます。今回は紅茶を用いてミルクティーのようなカクテルを紹介しました。

yukikoの試飲コメント・薩摩

近年ではソーダ割りに合う酒質の芋焼酎が増えたので、炭酸を注いだ時、しばらく経った時など香りの立ち方を様々楽しめるようになりました。今回は薩摩焼酎を代表するさつまいも品種「コガネセンガン」を使用した芋焼酎でした。さつまいもの品種も多様化しているので、味わいも様々。料理との「美味しいコーディネート」のバリエーションも増えています。
カクテルは、紅茶のフレーバーが先に届いてきて、その後から芋焼酎のほっこりした感覚が楽しめました。個人的には黒糖やチョコレート、シナモンなどをトッピングするのが好きでした。

 

④ 琉球(沖縄県)

約600年の歴史があり、日本最古の蒸留酒と言われるのが泡盛です。沖縄県には9つの島に47の蔵があり、沖縄で生産されている泡盛は必ず「琉球泡盛」と呼ばれます。黒麹菌の生育によって米のでんぷんがブドウ糖へ変化し、クエン酸が生成されます。温暖多湿の沖縄の気候下での酒造りに昔から使われていた麹菌です。

また、沖縄県内の水は硬水でミネラル分が多いため、微生物の働きが促進され、重厚な香りが造られます。昨年の9月までの規定ではアルコール度数45未満のものしか泡盛と言えませんでしたが、現在は45度以上でも泡盛と言えるようになりました。

【GI琉球 原料】
麹 …黒麹菌を用いた米麹のみ
水…沖縄県内で採取したもの

【試飲酒・おつまみ】  泡盛「海乃邦 10年貯槽古酒」ストレート × 珊瑚黒糖
(パネラー長嶺さん)今回はアルコール度数43度の10年古酒を用意しました。沖縄では「長く寝たお酒ほど起きるのが遅い」と言われます。古酒ほど飲むまでに時間をおいたほうが良いので今回は30分置きました。日本酒のようにクイっと顎で飲むのではなく、舐めるように少量を舌先で広げて鼻に抜ける香り、喉に落ちるまろやかさを楽しみながら飲むのがコツです。アルコール度数を強く感じる方は少し水を足してみて下さい。ただし氷を入れると古酒の良さである“開いた時の甘さやまろやかさ”が感じられにくくなるので水のみ足すことをおすすめします。

【カクテル】  Banana Land / 泡盛「尚」使用
(南雲さん)バナナリキュールと牛乳を使ったカクテルを紹介しました。シェイクをして、すぐにできる簡単カクテルです。甘みが余韻として残る泡盛を選びました。

yukikoの試飲コメント・琉球

泡盛特有の香味由来となる「バニリン」という成分によってバニラのような甘い香りが楽しめるのも、泡盛ならではの楽しみ方だと思います。試しに30分置かずにストレートで飲んだところ「アルコール度数が強いお酒」というシャープな印象が強く届いてきました……。美味しさが異なるので、古酒ほど“開かせる”時間は大事ですね。珊瑚黒糖と一緒に飲むとチョコレートのような甘みと濃厚さを感じる「美味しい1杯」になりました。
カクテルはバナナと泡盛の相性が良く美味しくいただきました。おつまみとして出されていた珊瑚黒糖も合いそうだったので、細かく砕いて振りかけてトッピングをして楽しみました。

壱岐・球磨・薩摩・琉球GI(地理的表示)本格焼酎・泡盛オンラインシンポジウム焼酎スタイリストyukikoさん取材・東京から情報発信マガジン「焼酎&泡盛スタイル」

シンポジウムに一般参加!「焼酎&泡盛スタイル」応援メンバーのリアルコメント

壱岐・球磨・薩摩・琉球GI(地理的表示)本格焼酎・泡盛オンラインシンポジウム焼酎スタイリストyukikoさん取材・東京から情報発信マガジン「焼酎&泡盛スタイル」

ウェブマガジン「焼酎&泡盛スタイル」の焼酎&泡盛応援メンバーの皆さんから、シンポジウムにオンライン参加された感想が届いています!飲み手の皆さんのリアルコメント、ぜひご覧下さい!

【焼酎&泡盛応援メンバー Aさん】
日ごろから本格焼酎は飲んでいたものの、GI制度については知りませんでした。20代の娘と息子も一緒に参加しました。壱岐には家族旅行で、薩摩と琉球エリアは仕事で行ったことがあります。今回興味を持ったお酒は壱岐焼酎です。

焼酎を初めて飲んだ娘が「これは美味しい」と壱岐焼酎の炭酸割りをごくごく飲んだのにはびっくりしました。それくらい飲みやすいお酒なのですね。カクテルも教えていただき、飲み方が変わると焼酎の印象も変わるのだと感じました。娘と息子は「焼酎って美味しいんだね」と話していましたし、翌日も2人で色々な飲み方を楽しんでいました。私は初めて飲む銘柄もあり、みんなで興味を持ちました。

GI制度のお話を伺い、やはり本格焼酎と泡盛は日本の伝統的なお酒として若い世代や外国人の方にもっと定着してほしいと強く感じました。おつまみやカクテルなどを家族で一緒にいただいたり作ったり、とても楽しいお時間を共有できました。

【焼酎&泡盛応援メンバー Bさん】
焼酎を時々飲む程度だったので、今回を機に知りたいと思って応募しました。GIに関しては全く知りませんでした。食料品は産地や安全性を求めて購入・飲食するにも関わらず、焼酎や泡盛に関しては、その土地の産物からお酒を造るくらいの漠然としたイメージでいたので、クオリティを保証するGI制度があると知って興味が深まりました。

九州と沖縄には行ったことがないのですが、壱岐と琉球は色彩豊かなイメージ、特に琉球は赤と青と透明感あふれるイメージ、球磨と薩摩は土地も人も力強く熱い魂を感じるイメージを持っています。

今回興味を持ち、気に入ったお酒は泡盛10年古酒です。10年貯蔵がどれだけ奥深いのか興味があったのと、実際に飲んでみた時に一番重厚感や特別感があって気に入りました。今まであまり興味を持っていなかった本格焼酎・泡盛の世界と、行ったことのない九州沖縄地方がGIを通して身近に感じ、いつか現地で飲みたいという希望につながり楽しかったです。

パネラーの皆さんから 「焼酎&泡盛スタイル」読者のみなさんへ

壱岐焼酎・球磨焼酎・薩摩焼酎・琉球泡盛 GI(地理的表示)本格焼酎・泡盛オンラインシンポジウム焼酎スタイリストyukikoさん取材・東京から情報発信マガジン「焼酎&泡盛スタイル」

「焼酎&泡盛スタイル」読者の皆さんに向けて、パネラーの皆さんからメッセージをいただきました。あわせて4つの地域のロゴマークも紹介します。本格焼酎と泡盛における世界で認定された”ブランド”を探す商品選びの目印になりますよ!

シンポジウムに参加できなかった方もこちらのメッセージを参考に、本格焼酎・泡盛を楽しんでみて下さいね。

① GI壱岐・石橋福太郎さん(下段右から3番目)

GI壱岐・壱岐焼酎・焼酎スタイリストyukikoさん取材!本格焼酎・泡盛イベントレポート 東京発ウェブマガジン「焼酎&泡盛スタイル」特集壱岐焼酎は米麹を使用して麦焼酎を造るのが特徴です。米麹を使用したことによる口当たりの良さと米の甘みを感じて飲んでほしい麦焼酎です。一方で、大分むぎ焼酎は麦麹を使用するため麦の香ばしさがしっかり届いてきます。地域によって個性が異なる面白さを感じながら、皆さんに壱岐焼酎を飲んでもらえたらと思います。

さらに、ぜひ皆さんに試してほしいのがお湯割りです。例えば芋焼酎をお湯割りにする方も多いと思いますが、壱岐の麦焼酎もお湯割りにするのが美味しいお酒でもあります。旨みや甘みが際立ってくるので私もお湯割りで飲むことは多いんですよ。

今回のシンポジウムでは口当たりがすっきりした減圧蒸留の麦焼酎を選び、壱岐焼酎のフルーティーな部分を感じてもらえる炭酸割りで紹介しました。壱岐焼酎には米麹と麦が醸す原料そのもののふくよかでまろやかな部分を楽しめる常圧蒸留の麦焼酎もあります。壱岐焼酎の個性がダイレクトに感じられるお湯割りも、ぜひ皆さんに楽しんでほしいですね。

② GI球磨・堤純子さん(下段左から2番目)

GI球磨・熊本県 球磨焼酎・焼酎スタイリストyukikoさん取材!本格焼酎・泡盛イベントレポート 東京発ウェブマガジン「焼酎&泡盛スタイル」特集最近では日本酒やワイン、ビールなど醸造酒は飲んだことがあっても、蒸留酒に馴染みのない方も多いと感じていますので、日本の蒸留酒としての魅力を伝えていくことも大事だと思っています。「球磨」という地で育まれた球磨焼酎は、球磨人吉地区で500年以上も前から造られている米焼酎です。そういった歴史的価値も皆さんに知って飲んでいただけたら嬉しいです。

本格焼酎の原料は米・麦・さつまいもなど様々ありますが、シンポジウムでも話題に挙がっていたように米(ごはん)を食べながらお酒を飲む時、やはり同じ原料である米を原料にして造られた米焼酎はとても合いやすいんですよね。日本の主食である米で造られたお酒であること、米を使った歴史ある日本のお酒であるというルーツを、私たちもさらに力を入れて皆さんに伝えていけたらと思っています。

現在は米を原料にしている本格焼酎として、蒸留や貯蔵についても様々な方法で米本来の可能性を引き出そうとしています。焼酎初心者の方や清酒好きの方もそういう点から球磨焼酎を手に取って飲んでもらえたらと思っています。

③ GI薩摩・小牧伊勢吉さん(下段左)

GI薩摩・薩摩焼酎・焼酎スタイリストyukikoさん取材!本格焼酎・泡盛イベントレポート 東京発ウェブマガジン「焼酎&泡盛スタイル」特集

GI薩摩は4つのGIの中で最後に登録されました。他の3つの地域との違いは、焼酎造りに必要な水、麹、さつまいもが全て鹿児島県産であるということです。

今回炭酸割りで紹介したのも理由があって、鹿児島県全体の取り組みとして、皆さんにもっと気軽に本格焼酎と付き合っていただきたい思いから炭酸割りを普及させていこうとしています。お湯割りの文化もありますが、新たな一面として、そのような動きがありますので飲み手の皆さんにも一緒にこれからの薩摩焼酎に着目してもらえたらと思っています。

今年3月には鹿児島県酒造組合のホームページがリニューアルしました。ポータルサイトやSNSも強化して、新しいマーケットに対応した取り組みを行っています。例えば、蔵元が行く鹿児島県内の居酒屋やスポットも紹介しています。皆さんが鹿児島県に遊びに来られた時に、焼酎が造られている風土や歴史も肌で感じてもらえるような情報を発信しています。「薩摩焼酎」というブランドを私たち蔵元だけで創り上げるのではなくて、お客さまと一緒に創っていけたら嬉しいですね。

④ GI琉球・長嶺哲成さん(下段右から2番目)

GI琉球・琉球泡盛・焼酎スタイリストyukikoさん取材!本格焼酎・泡盛イベントレポート 東京発ウェブマガジン「焼酎&泡盛スタイル」特集まだまだGI自体も知られていないので、そのPRもしっかり行っていきたいですね。泡盛は沖縄県の全ての酒メーカーが沖縄県産をPRするため「琉球泡盛」と表記をしています。もともとアメリカの統治下を経て、沖縄県ならではの数少ない製造業を大切にしようという思いもあり、昔から「本場泡盛」と表記するメーカーは多くありました。

2004年(平成16年)国税庁の「地理的表示に関する表示基準」「地理的表示に関する表示基準第2項に規定する国税庁長官が指定するぶどう酒、蒸留酒又は清酒の産地を定める件」という2つの基準が公示されたことによって「琉球泡盛」と表示するようになりました。泡盛自体は他の地域でも造れるお酒であるため、沖縄県産を見つける時には「琉球泡盛」と表示されているかを目印にして下さい。

他の3つのGIとの大きな違いは、泡盛は寝かせて「古酒」(クース)として楽しむ文化を持ったお酒であるということです。これは壱岐・球磨・薩摩にはない個性なのでこれから泡盛を飲む方にも着目してほしい部分です。戦争によって途絶えてしまいましたが、琉球王朝時代には100~200年の古酒もあったそうです。今でも「古酒を育てる」という思考や文化は沖縄で引き継がれています。

それも踏まえて「焼酎&泡盛スタイル」読者の皆さんにお伝えしたいのが、泡盛の楽しみ方は大きく分けて2つあるということです。貯蔵3年未満の若い泡盛は、もともと食中酒として設計されていることが多いのでアルコール度数25度や30度です。水割りやお湯割りにして加水することでアルコール度数を10~15度に抑えて沖縄では飲まれています。泡盛は高級脂肪酸が含まれているため加水しても水っぽくなりません。コクや香りもしっかり楽しむことが出来ます。米を原料にしたお酒なので水割りやお湯割りは料理と合わせやすいんですよ。

一方、10年や20年といった古酒はメイプルシロップやバニラのような甘い香りを楽しんでいただきたいお酒です。今回シンポジウムで提案したように、割らずにゆっくり開かせて時間をかけて味わってみて下さい。沖縄県には古酒がたくさんあるので、ぜひ沖縄にいらした時に古酒の良さをたっぷりと味わっていただきたいですね。

シンポジウム取材を終えて……焼酎スタイリストyukikoのリアルトーク

壱岐焼酎・球磨焼酎・薩摩焼酎・琉球泡盛 GI(地理的表示)本格焼酎・泡盛オンラインシンポジウム焼酎スタイリストyukikoさん取材・東京から情報発信マガジン「焼酎&泡盛スタイル」

私は「焼酎スタイリスト」としての活動もしていますが、大学や教育機関での講師でもあるため「ブランド」について講義を受け持つことがあります。ブランドとは「商標」という意味を持ち、他のものと差別化し、価値の保護と向上を図るものです。

日本の伝統的なお酒「本格焼酎・泡盛」は、「Made in Japan ブランド」 です。シンポジウムでも、昨年11月に決定された政府の農林水産物・輸出拡大戦略では全27項目の重点品目のうち、お酒に関しては清酒、ウイスキーとともに本格焼酎・泡盛が指定された説明がありました。

海外を意識した日本ブランドとして、本格焼酎と泡盛は国内外の他品目と差別化した価値をPRしていく必要があるでしょう。蔵元など生産者や酒造関係者だけではなく、GIの4つの地域や日本にゆかりのある私たちエンドユーザーも、それぞれの価値や個性を理解していく環境が今後はさらに大事になってくると思います。

GIの指定を受けている4地域(壱岐・球磨・薩摩・琉球)に関しては、日本各地に存在する蒸留酒「本格焼酎・泡盛」の中から4つのブランドの違いが明確にエンドユーザーに伝わり、理解してもらえる環境ももっと必要です。

単にお酒を飲むという行為に終わらず、きちんとモノの価値や個性を理解し、自分に合ったスタイルで楽しむ……そういう人たちが増えることで、その蓄積が結果的に価値を高めることにつながるのではないでしょうか。そんな応援の気持ちを込めて、今回ウェブマガジン「焼酎&泡盛スタイル」ではイベントレポートを制作しました。

シンポジウムに参加された方、参加できなかった方にとって、このレポートをご覧いただくことでGI壱岐・GI球磨・GI薩摩・GI琉球それぞれの違いを理解するためのサポートになれば「焼酎&泡盛スタイル」編集部スタッフも私も嬉しく思います。

きちんとモノの価値を理解する。
「1杯の価値」を高める。

個性の違いが分かると、皆さんのお酒の選び方や飲み方ももっと広がり、楽しみも方も増えます。自分に合ったスタイルを見つけることができます。そこから生まれた価値ある時間をウェブマガジン「焼酎&泡盛スタイル」読者の皆さんには大事にして、これからも本格焼酎・泡盛を楽しんでほしいと思っています。この蓄積が造り手にとって、さらに大きく言えばGIそれぞれのブランド、Made in Japanブランドにとって未来へつながる「大きな価値」になると思うのです。

ぜひ皆さんにとって「価値ある1杯」を楽しんで下さいね。私も教育現場で「ブランド」に携わる講師としてスキルを磨きながら、「焼酎スタイリスト」として今後も皆さんのお役に立てる“時流”に合った情報をお伝え出来るように頑張りたいと思います。

全国の皆さん、みんなで日本の伝統的なお酒「本格焼酎・泡盛」のGI(地理的表示)も応援しながら、一緒に日本を代表する「ブランド」を育てていきましょう!

 

[記事企画・取材・撮影・文]yukiko/焼酎スタイリスト・泡盛スタイリスト・販促アドバイザー
[協力]壱岐酒造協同組合、球磨焼酎酒造組合、鹿児島県酒造組合、沖縄県酒造組合、色彩総合プロデュース「スタイル プロモーション」
[編集]「焼酎&泡盛スタイル」編集部

※写真の無断転用、二次使用はお断り致しております。ご理解ご協力のほど宜しくお願い致します。

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【福岡/GI(地理的表示)本格焼酎・泡盛オンラインシンポジウム from九州・沖縄】

◎日時 2021年3月20日(土) 14:00~16:30(オンライン)

◎主催 福岡国税局、熊本国税局、沖縄国税局事務所

 

 

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