【特別取材】國酒「本格焼酎・泡盛」を楽しむ“先”にあるもの――赤十字子供の家/武蔵野市
日本のお酒「國酒」にあたる清酒・本格焼酎・泡盛、そして日本ワインメーカーが集うチャリティ試飲会「酒は未来を救う」の”その先”に迫った特別編!寄付先の日本赤十字社と児童養護施設「赤十字子供の家」協力のもと、焼酎スタイリストyukikoさんが現場取材!新元号「令和」が幕開けした 5月1日、日本赤十字社の名誉総裁には皇后雅子さまが着任されています。日本の新たな時代がスタートした今、國酒を応援する皆さんとあらためて考えたい「お酒を楽しむ先にあるもの」とは?その先に見える「日本の未来」とは?
≪赤十字子供の家≫
児童福祉法(第27条)の規定に基づき、東京都児童相談所から家庭環境等により施設での保護養育が措置された子どもたちを預かる児童養護施設。同法(第41条)に基づいて1950年に東京都より児童養護施設の認可を受ける。1982年に武蔵野市へ改築移転、2000年には創立50周年を迎える。2018年2月に施設の老朽化のため現在の新園舎に改築移転。現在は2歳から小学校6年生までが生活している。日本赤十字社東京支部によって運営。
http://www.tokyo.jrc.or.jp/kodomonoie/index.html
≪日本赤十字社≫
1877年(明治10年)に設立された博愛社が前身とされ、1886年に日本政府のジュネーブ条約加入により、翌1887年に日本赤十字社と改称。「人の命を尊重し、苦しみの中にいる者は、敵味方の区別なく救う」ことを目的とし、3つの領域(いのちを救う・生活を支える・人を育む)のもと活動。2019年(令和元年)5月1日の新元号にともない皇后陛下が日本赤十字社名誉総裁に就任。明治以降は歴代皇后が着任し、活動を支援。香淳皇后さま(昭和)・上皇后さま(平成)と受け継がれてきた歴史を持つ。
http://www.jrc.or.jp/
お酒を楽しむ“先”にある、子どもたちの未来
焼酎スタイリストyukikoです。大桟橋ホール(神奈川県横浜市中区)で開催されたチャリティ試飲会「酒は未来を救う」は、第1弾のイベント特集で紹介したように 子どもたちの未来を願い、試飲会の実費用以外の売上金すべてが寄付先におさめられているイベントです。開催11年目の今年は焼酎・泡盛蔵16社、清酒蔵34社、日本ワイン14社が参加しました。(第1弾・蔵元の活動はこちらから)
現在の寄付先は、がんの子どもを守る会、赤十字子供の家、あしなが育英会(東日本大震災遺児支援)、タイガーマスク募金寄付先、東日本大震災被災地児童養護施設です。来場者のチケット代、蔵元から提供されるグッズ代などから各寄付先へ分配され寄付されます。
毎年、寄付額200万円を目標に実施されているチャリティイベントです。皆さんから寄せられた寄付金は、どのように現地で活かされているのでしょうか。
「酒は未来を救う2019」第1弾特集に続き、飲み手である私たちが手に取ったお酒の “先”にあるものとは――今回は日本赤十字社にご協力いただき、「酒は未来を救う」寄付先のひとつである「赤十字子供の家」に伺ってきました。
「赤十字子供の家」をサポートするチャリティイベント「酒は未来を救う」
チャリティイベント「酒は未来を救う」の寄付先になっている「赤十字子供の家」は、東京都武蔵野市にある日本赤十字社が運営する児童養護施設です。最寄りのJR武蔵境駅前にはイトーヨーカドーをはじめスーパーなどが充実していて、子どもたちが走り回って遊べる公園もあります。学校や住宅が並ぶ住みやすい地域で、駅から徒歩15分くらいのところに施設があります。
この児童養護施設「日本赤十字子供の家」には、チャリティ試飲会「酒は未来を救う」で集まった寄付金が毎年7~8月頃に送られ、2009年第1回目のイベントから累計で600万円を超える金額が届けられています。
日本の児童養護施設の歴史をたどると、もともとは戦争によって親を亡くした戦争孤児が多かったのですが、現代の入居理由は虐待が6割を占めており、親の精神疾患によって家庭での生活が困難というケースも多くみられます。
なかでも「赤十字子供の家」は武蔵野赤十字病院の隣の敷地にあり、過去には心臓病や白血病、喘息持ちの子ども、現在はアレルギー等の医療的ケアが必要な子ども、障がいを持った子どもも受け入れている施設です。病院に隣接した環境のもと様々な子どもたちのケア、自立支援を行っています。
(「赤十字子供の家」の玄関。子どもたちにとって親しみやすいデザイン・色づかいがされていて、羽ばたき上昇する翼をイメージ)
現在「赤十字子供の家」では定員40名の子どもに対し、栄養士、調理師、園内保育担当者など日常生活をサポートする専門家、理学療法士や言語聴覚士など臨床心理士、自立をする時に困らないように自立支援コーディネーターや家庭支援・里親支援の専門職員をなど、パート社員を含んだ55名で子どもたちの日常、自立をサポートしています。(2019年4月現在)
子どもたちのなかには家庭で受けた経験によって、他者を警戒し自分の思いを上手く表現できない子、友達とコミュニケーションが取れない子、暴力をふるってしまう子などもいて、子どもたちのデリケートな部分と毎日向き合いながら、ひとり立ちできるまでの日々を支援しています。
チャリティイベント「酒は未来を救う」で集まった寄付金の使いみち
チャリティイベント「酒は未来を救う」で集まった寄付金が「赤十字子供の家」ではどのように活かされているのか園長の寺田政彦さんにお聞きしてきました。
(寺田さん)「初年度の2009年は、送っていただいた寄付金で施設の子どもたち40名全員に新しい靴を買ってあげることができました」
1982年(昭和57年)に武蔵野市へ改築移転した「赤十字子供の家」は、老朽化のため2018年2月に立て替えが行われました。昨年からはその費用に充てられています。
(1980年代から使用され、老朽化していた施設の様子。お風呂場と壁がはがれた室内。幼い子どもたちはここで生活していた)
(寺田さん)「おかげさまで、今では新しい施設での生活が始まり、子どもたちの生活をサポートする環境も以前より充実しました。昨年は「酒は未来を救う」からいただいた寄付金でパソコンを購入したり、アレルギーを持った子どもたちの食生活に対応するため、専用の調理場に必要な鍋や食器類などを揃えるため厨房設備に使いました。
(アレルギーの子どもたちに対応した調理室。栄養士や調理師によって食の安全も強化している)
私たちも施設の子どもたちにはなるべく一般家庭の子どもと同じような生活を送らせてあげたと考えています。そのため、一般家庭で行われている行事や日本の慣習も体験させてあげたいんです。七夕やお月見、豆まきといった季節行事も大事にしています。
以前、10月頃に奥多摩へキャンプに行ったのですが、キャンプの費用は寄付金を使わせていただきました。その時に「酒は未来を救う」主催者やスタッフの皆さんがお昼のバーベキューに参加して下さったこともあります」
(写真提供 赤十字子供の家)
バーベキュー で余ったチーズを鉄板で焼いて振舞った時には、子どもたちも大喜びだったそう。食べ物を無駄にせずに即興で一品作ってしまう姿は、飲食店関係者で構成されているNPO酒は未来を救うならではなのかもしれません。
(寺田さん)「寄付だけではなくて、実際に現場に足を運んで下さって子どもたちと触れ合って下さいます。子どもたちにとっても外部の方々と接する貴重な経験になりますし、そういう経験をたくさん作ってあげたいと思っています」
産学連携で支える、子どもの未来
「赤十字子供の家」がリニューアルした時には、多摩美術大学のサポートも受けています。もともと多摩美術大学と日本赤十字社は産学連携の関係があり、「赤十字子供の家」を建て替える際には子どもたちの生活環境を考えた設計やデザイン提案に協力しています。
(寺田さん)「家庭に近い食育環境をつくるため、子どもたちが暮らす室内空間に対面キッチンを設けました。スタッフが料理をしながら子どもたちと会話ができ、コミュニケーションが取りやすいようにしています。小学生以上の子どもにはプライバシーが守れる個室を用意するなど、なるべく一般家庭に近い環境で日々の生活を送れるようにしています」
子どもたちが自分で身の回りのことをできるように、随所で工夫がなされています。
たとえば、子どもの身長に合わせて高さの異なる2種類の洗面台が設けられていたり、個々の名前が書かれたロッカーや棚が用意されていて、幼い頃から収納や整理整頓の意識が根付くようになっていました。床やマットも黄緑色や水色などの優しく明るい色使いがされていて、子どもたちが自然に心が開けてコミュニケーションを取りやすい空間設計もされています。
さらに、新しくなった施設の中庭にはあえて滑り台やブランコなどの遊具を設置せず、子どもたちが自ら考えて遊びを生む環境にもなっています。遊びの中から想像力や協調性、自立心などを養う工夫がされているのです。
現実と向き合い、子どもたちの未来を育んでいく
チャリティイベント「酒は未来を救う」で集まった寄付金は、このように子どもたちの心身ともに健やかな成長を願って大事に使われています。
「赤十字子供の家」の基本理念は、「生きる力を育み、自立へと共に歩む」と掲げられています。しかし、児童養護施設出身者の3割が中学卒業で社会に出ている現実もあります。現代社会において未成年が誰にも頼らずに一人で自立して生活してくことは容易ではありません。
現在、児童養護施設で暮らす子どもたちの現状について寺田さんに教えていただきました。
(寺田さん)「高校生の場合は、国と東京都の予算から1か月のお小遣いとしてひとり5,000円ちょっとが支給されます。充分なお小遣いに思えるかもしれませんが、例えば携帯電話の使用料などもそのなかから払うんです。携帯電話は現代の高校生にとって必要なコミュニケーションツールなので、携帯代を支払ったら彼らの手元には残りわずかになってしまいます。
私たちスタッフも、現代の子どもたちが形成するコミュニケーションの輪から外れないようにしてあげたいと思っていますが、行政からサポートがあっても周囲の子どもたちと同じように生活し、生きていくには充分な予算とは言い難い現実があります。だからアルバイトができる年齢に達した子どもたちには社会との接点をもつ勉強という意味も含めて、学業に支障がない範囲でアルバイトを推奨しています。
だから、チャリティイベント「酒は未来を救う」を通して皆さんから寄付をしていただけるのは、子どもたちの生活を支える上で大変ありがたいことなんです」
日頃、私たちがお酒を飲むという行為は、普通なら子どもたちの生活とは接点が無いように思えるかもしれません。しかし、このようにチャリティイベント「酒は未来を救う」を通して「赤十字子供の家」で生活する子どもたちの日常を支えるものになっています。皆さんが召し上がるお酒1杯の価値が、このような部分にもつながり、広がっていくこともあるのです。
(寺田さん)「募金をしてくださった皆さんに私たちがお礼を伝える機会はなかなかないのですが、今回のようにウェブマガジン「焼酎&泡盛スタイル」の取材や掲載を通して、一人でも多くの方々に私たちの感謝の気持ちを届けられていたらとても嬉しく思います。皆さん、本当にありがとうございます」
自立できる未来を目指して――もうひとつの「故郷」のような役割に
園長・寺田さんは会話の随所で「養護施設の目標は、子どもたちが健全に自立できる力をつけることなんです」と語ります。施設で育った子どもたちがつまずく理由には主に2つあり、人間関係と金銭感覚がキーポイントになるそうです。
大所帯で過ごしていた施設を退所して一人暮らしを始めた子どもの中には寂しさや孤独感に苛まれたりもします。自由にお金が使えるようになると浪費しがちな子どももいます。
その対策として「赤十字子供の家」では自立支援にも力を注いでいます。
(寺田さん)「私たちの目的は、その子が「赤十字子供の家」を退所し、新たな親子関係が構築されたり、社会に出た時に自立できる力をつけることです。里親支援や親子の家庭復帰に向けて、新しい施設の中に親子宿泊訓練室があります。数日間、衣食住をともにして関係性を築くことで、親子ともども安心して家庭に入ることができるのです」
(施設にある親子宿泊訓練室。アパートの一室のようになっていて、子どもたちは親と一緒に炊事、洗濯、掃除など日常生活の予行練習ができる)
ひとり暮らしを始める子どもには親子宿泊訓練室でひとり暮らしの実体験をしてもらい、自立の準備をするためにも利用します。
「赤十字子供の家」の施設には、子どもたちが退所した後も心の拠りどころとしていつでも頼ってもらえる存在でありたい……という想いが随所に込められています。入り口のガラス一面に設置されたブラインドには、建て替え前の施設が描かれていて、「赤十字子供の家」を巣立っていった子どもたちの想い出の場所、気軽に顔が出せるような故郷のような場所の意味合いを持たせています。
寺田さんいわく、「ブラインドを閉じてしまうとせっかくのイラストが見られないので、常にブラインドを開けたままにしているんですよ(笑)」
(建て替え前の施設の様子がイラストで描かれたブラインド。滑り台や遊具なども描かれている)
チャリティイベント「酒は未来を救う」で集まった寄付金は、このように子どもたちの未来、そこで働く人たちの希望につながって います。私たちがお酒を飲む行為の“先”にあるもの――皆さんそれぞれの「1杯の価値」をイメージしてもらえたらと思います。来年のチャリティイベント「酒は未来を救う」も同じ頃に開催予定だそうです。
國酒でつながる未来に、乾杯!
[取材・撮影・文] yukiko(ユキコ / 焼酎スタイリスト、日本酒スタイリスト、清酒スタイリスト、販促色彩講師)
[協力] 日本赤十字社、赤十字子供の家、色彩総合プロデュース「スタイル プロモーション」
※写真の無断転用、二次使用はお断り致しております。ご理解ご協力のほど宜しくお願い致します。
≪酒は未来を救う〜今、私たちに出来ること〜≫
日時:2019年3月24日(日)13:30-16:00(受付13:00開始)
場所:横浜港 大桟橋ホール
(神奈川県横浜市中区海岸通1-1-4)
寄付先:がんの子どもを守る会、赤十字子供の家、あしなが育英会(東日本大震災遺児支援)、タイガーマスク募金寄付先、東日本大震災被災地児童養護施設 新一年生への入学祝として
主催:NPO法人 酒は未来を救う会
【焼酎・泡盛】ゑびす酒造(福岡県)、大石酒造場、豊永酒造(熊本県)、常徳屋酒造場(大分県)、柳田酒造、黒木本店、小玉醸造、古澤醸造、渡邊酒造場(宮崎県)、鹿児島酒造、国分酒造、小牧醸造、小正醸造、軸屋酒造、植園酒造、大海酒販(鹿児島県)、多良川(沖縄県)
【清酒】八戸酒造、鳩正宗(青森県)、阿櫻酒造、新政酒造、福禄寿酒造(秋田県)、阿部勘酒造店、寒梅酒造(宮城県)、曙酒造(福島県)、来福酒造(茨城県)、菊の里酒造、小林酒造(栃木県)、青木酒造(新潟県)、吉田酒造店、御祖酒造(石川県)、武の井酒造(山梨県)、佐久の花酒造、豊島屋、宮坂醸造(長野県)、土井酒造場(静岡県)、冨田酒造、福井弥平商店(滋賀県)、木下酒造(京都府)、山陽盃酒造(兵庫県)、平和酒造(和歌山県)、吉田酒造(島根県)、今田酒造本店、天寶一、美和桜酒造(広島県)、成龍酒造(愛媛県)、天山酒造(佐賀県)
【日本ワイン】エーデルワイン(岩手県)、高畠ワイン、タケダワイナリー、ベルウッドヴァンヤード鈴木智明(山形県)、ココ・ファーム・ワイナリー(栃木県)、麻原酒造越生ブリュワリー(埼玉県)、横濱ワイナリー(神奈川県)、麻屋葡萄酒、アルプスワイン、塩山洋酒醸造、くらむぼんワイン、ドメーヌQ甲府ワインポート、シャトージュン、蒼龍葡萄酒、マルサン葡萄酒、丸藤葡萄酒工業、ルミエール(山梨県)
【物販】Art Note Viking、サラのコトノハ本舗、カネコ小兵製陶所、Love Japan Wine
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焼酎スタイリスト®、ファッションスタイリスト。色彩総合プロデュース「スタイルプロモーション」代表。株式会社永谷園を経て“色が強み”のファッションスタイリストに転身。全国の蔵元らと連携して「焼酎スタイリスト®」として日本のお酒「國酒」を“流行×オシャレ”に発信。トレンドや美容情報に精通し、ファッション誌やビューティー誌にも登場。”時流”を掴んだお酒のコメントやアドバイスには定評がある。
蔵元や酒販店・飲食店からの信頼も厚く「蔵元公認 焼酎アンバサダー」「焼酎ナビゲーター」「泡盛スタイリスト®」「日本酒スタリスト®」なども務め、全国で講演やイベントプロデュース・企業研修を行う。大学の非常勤講師として教育分野でも活躍。(専門:販促色彩・ビジュアルプロモーション・ブランド構築・伝統文化産業)
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