焼酎スタイリストyukikoが韓国・釜山で検証「焼酎輸出の可能性」―Busan International Wines & Spirits Expo 2025

日本の焼酎輸出の可能性を検証する動きが、韓国市場でも注目されています。韓国・釜山で開催された酒類業界向け国際展示会「Busan International Wines & Spirits Expo」は、その具体的な実践の場の一例といえます。 同展示会は韓国市場を視野に入れた酒類ビジネスの市場開拓や最新動向の発信を目的とし、2025年には12月19日(金)から21日(日)まで開催されました。日本からは海外展開を見据えた公式出展枠(日本パビリオン)として10社が参加し、輸出を前提とした商品提案や情報発信が行われました。

今回は、展示会の特設会場でセミナー「日本の焼酎の多様性を知る」の講師を担当したyukikoさんのインタビューやコメントも交えながら、現地で見えた「焼酎輸出の可能性」をお届けします。

このセミナーは19日(金)、20日(土)2日間にわたり開催され、BtoB・BtoCの双方を対象とした内容で実施されました。講義は韓国語で行われ、日本の酒類輸出状況や特徴、焼酎の多様性や着目ポイントなど、時流を踏まえた視点から展開されました。セミナー参加者は大口酒造株式会社、薩摩酒造株式会社、天星酒造株式会社(鹿児島県)、合資会社光武酒造場(佐賀県)の焼酎も試飲。会場は満席で立ち見が出る回もあったほどの盛況で、日本の焼酎について、韓国の皆さんに興味を持ってもらう機会になったようです。

—このイベントは韓国の酒類バイヤーや飲食店なども多く来場するそうですが、今回「日本の焼酎の多様性を知る」といテーマでセミナーを行ってみていかがでしたか?

韓国にもソジュ(소주/焼酎)の文化があります。そのため、韓国の皆さんのなかに根付いているソジュの文化も大事にして、日本の焼酎について伝えることをとても繊細に考えて取組みました。

もともと私は「焼酎スタイリスト」という立場以前に、大学など高等教育機関で講師として20年従事しています。専門は文化論、色彩学、ファッション、地域伝統文化産業におけるマーケティングやブランディングです。私のなかでは酒文化もそれらの一部なんです。

大学の講義のなかでも韓国カルチャーが現在世界的にも勢いがあることなど専門的に分析した内容を説明することも多々あります。もちろん、アジアや朝鮮半島の歴史・文化・服飾・民俗学といった視点でも教えています。さらに自身の研究分野として、実際に韓国の10の地域に足を運んで国家遺産を見たり、食文化に触れたり、現地の方からお話を伺ったりと理解を深めてきました。

今回のセミナーは、韓国と日本、両者の文化や焼酎についての知識が必要なテーマです。私の場合は、韓国や釜山の歴史に基づいた食文化、酒文化、地域性などを学んで自分なりに把握していたので、そこから得ていた知識や情報が今回の「日本の焼酎の多様性」を伝えるうえで、とても役に立ちましたね。・

—韓国の10地域とは、どこに行かれたことがあるのですか?

朝鮮半島の歴史を学ぶとよく出てくる国名がありますよね。百済、高句麗、新羅、伽耶、高麗、李氏朝鮮など、現在の韓国内で当時都となっている地には大抵行っています。ソウルはもちろん、主に扶余、公州、全州、慶州、安東、仁川、釜山、金海、済州です。日本文化と同様に、お酒も献上品だったり地元で飲まれていたり、地域によって個性があるんです。それとともに食文化や職人技術も受け継がれています。まだ行けていない地もありますが、学術的にも日本と韓国文化・大陸文化との関係性は、私の重要な研究テーマです。

—今回、yukikoさんの登壇セミナーでは立ち見が出るなど、日本の焼酎について、韓国の皆さんの関心度が表れていたようですね。何かエピソードはありますか?

そうですね。セミナーが終わって自分の席に戻ったら、控えスペースの椅子がすべて無くなっていました。どうやらセミナー中にも参加希望者が増加して椅子が足りなくなったそうで……(笑)。立ち見も出たり、さらに定員オーバーでお断りする方もいらした、と後から会場スタッフの方からお聞きして、私の椅子が無くなっていた理由にも納得しました(笑)。

もうひとつは、日本パビリオンのブースにいた焼酎蔵元が「午後になってから、炭酸割りの試飲オーダーが増えたんだよね」と話をしてくれたことです。話をすり合わせてみたら、どうやら両日ともセミナー終了時から炭酸割りのオーダーが増えたようなのです。受講参加者がそのまま日本パビリオンに足を運んでくれて、セミナーで聞いた内容に興味を示してくれた表れといえます。

初日からその傾向が見られたので、2日目は日本パビリオンに出展している全メーカーに協力してもらって、「Team JAPAN」 として日本の焼酎、日本のお酒の多様性を知ってもらうようセミナーも強化に努めました。

—韓国の文化やトレンドも知るyukikoさんですが、日本の焼酎は韓国の人たちにも広く受け入れられると思いますか?

自分が韓国各地で様々な文化や人々と触れているからこその発言になるのですが……現段階では、まだ多くの人たちに日本の焼酎は知られていないという実感があります。そもそも、韓国の人たちは日本の焼酎を飲む以前に、すでに自国のソジュがあるわけですから。

しかし、日本の焼酎は「アプローチのしかた」で韓国市場に独自のポジションを確立できる可能性を持っていると判断しています。これは、日本の焼酎が今後磨きをかけられる「可能性」でもあると思うんです。輸出を考えている日本の焼酎メーカーの皆さんも、そこはプラスに捉えてチャレンジして欲しいですね。

—韓国市場において、日本の焼酎はまだまだ「可能性」があるということなのですね。

重要になってくるのは、先述したように「どのように日本の焼酎をアプローチするか」です。つまり、ブランディングです。単純に「海外向け商品です」や「日本で売れているから」では意味がありません。現段階では、日本市場と同じ手法や成功事例を行っても、韓国では効果は表れにくいでしょう。きちんと韓国市場、韓国の人たちに沿ったニーズとして展開する必要があるということです。

これは作り手であるメーカーや販売店も販促戦略の一環として練ったほうが良いのはもちろんなのですが、さらに重要になってくるのは、韓国市場と日本の焼酎市場双方を理解したうえでの情報設計が重要です。市場構造や酒文化の差異を踏まえた設計があってこそ、現地での納得や行動につながると考えています。今回はその設計を担う立場として登壇に臨みました。

—具体的に、どのような部分に注力したのですか?

今回のセミナーでは、私が韓国各地で体験し学び得てきた歴史的背景、地域文化、酒文化や食文化などをもとにした仮説を立てて講演内容を組みました。そして、実際にセミナーで検証してみたんです。

韓国生活での経験をもとにした仮説通りならば、講演後の日本パビリオンで「焼酎炭酸割り」のオーダーが増えるであろう、と。そうなったら、日本の焼酎は韓国のソジュにとってライバルではなく住み分けができるものであり、それぞれが両国の酒文化をリスペクトする象徴的存在として成り立つ可能性があると考えていました。韓国市場での「今後の可能性」の度合いを判断できるなと。

—先ほど、焼酎蔵元が話されていた「午後に炭酸割りが増えた」というエピソードにつながってくるのですね。

そうですね。もともと日本と韓国では飲酒文化が異なります。だからこそ、今回私が担う講師・登壇者の役割がとても重要だと認識していました。韓国語がネイティブとはいえないながらも、私がセミナーでそのポイントを明確にし、韓国の皆さんに納得してもらえることができたら、かならず日本の焼酎に興味を示してくれる行動につながると予測していました。それが「炭酸割りが増えた」という行動に見られたといえますね。

—韓国での仮説と検証、とても興味深いですね。日本の焼酎の可能性が見えたといえるのではないでしょうか。今後、焼酎メーカーが韓国市場にチャレンジしたい時の参考になるのでは?

そうなったらいいですね。韓国語で実施したセミナーでは、現地の酒文化や消費傾向を踏まえながら、日本の焼酎の楽しみ方を提案しました。セミナー後に炭酸割りのオーダーが増加したことは、提案の方向性が一定の共感を得られた結果だと受け止めています。韓国市場において、日本の焼酎がどのようなアプローチをすれば受け入れられるのか、その一端が確認できた出来事でした。

韓国市場において重要なのは、単発ではなく継続的な情報発信と市場適応です。「文化」は継続によって定着していくものです。今回の登壇が、今の”時流”’(時代の流れ)を踏まえた上での、その第一歩としての位置づけとなっていれば幸いです。

今後は、今回得られたデータをもとに酒造業界の皆さんと連携しながら、国内外市場での展開の可能性をさらに検証していきたいと考えています。そして、輸出を目指す「Team JAPAN」の皆さんと連携して、日本の焼酎の価値がさらに高められていくよう、私も引き続き発信と実践を重ねていく予定です。

韓国の皆さんにも、日本の焼酎や酒文化をより一層魅力的なものとしてお届けできるように、私自身も韓国文化の知識や経験、語学力にさらに磨きをかけていきたいですね。

今後も韓国で開催や出展があるようなら、今回の「Busan International Wines & Spirits Expo 2025」の動向をもとに、「Team JAPAN」の積み重ねがどのように形になっていくのかを見ていきたいですね。これは純粋に、いち日本の焼酎応援者としての期待でもあります。

—登壇を終えた翌日、yukikoさんはすでに慶州の地にいたそうですね。

慶州は新羅(前57年-935年)の都が置かれた地で、韓国の歴史・文化を語るうえで欠かせない主要都市のひとつです。王宮があった慶州月城(경주 월성/半月城 반월성 とも)の小高い丘から眺める夕日はとても美しく、私はその景色が好きなんです。観光客があまり足を運ばないエリアがあって、そこではゆっくりと日暮れの移ろう色彩に浸ることができます。

昔の人たちもこの景色を眺めていたのだろうかと想像すると、先人たちから受け継がれてきた伝統や歴史という“時間の尊さ”を実感できるんです。

一方で、東洋最古の天文台遺跡といわれる瞻星台(첨성대/チョムソンデ)のライトアップは、世界遺産の“見せ方”がとても現代的でスタイリッシュ。敷地内にはさまざまな工夫が施されていて、その演出に思わず心が動きました。自分の記録用とはいえ、リアルタイムの自然美、景観や空気感を残しておきたくて、これまでしたことのないインスタライブで配信してしまったほどです(笑)。

もうひとつ好きな場所は、751年に人の手のみで築かれた石窟庵(석굴암/ソックラム)です。職人技術の高さと精神性を感じさせる厳かな空気に魅了され、昨年に続いて再び足を運びました。前日までの自分を振り返り、静かに見つめ直す時間にもなりました。

—更なるyukikoさんの活躍も、「 Team JAPAN」の今後も気になるところですね。最後にコメントをお願いします。

私自身は、大学など高等教育機関での講義や学術研究を引き続き深めながら、韓国と日本それぞれの文化や価値を、より分かりやすく、より立体的に伝えられる存在でありたいと考えています。文化教授法や言語力、表現力も磨き続けていきたいと思います。

そして「Busan International Wines & Spirits Expo 2025」では、日本・韓国双方のスタッフの皆さん、そして輸出を志す「Team JAPAN」の皆さんに多方面から支えていただきました。心より感謝申し上げます。次にお会いする際には、さらに成長した姿でご一緒できるよう努めてまいります。

海外市場において文化が定着するためには、現地での実践と検証を継続的に積み重ねていくことが不可欠です。今回会場で見られた来場者の具体的な反応は、日本の焼酎がアプローチ次第で韓国市場において新たな接点を築き得ることを示す、ひとつの兆しでもあると受け止めています。

今回セミナーに参加してくださったバイヤーや小売・飲食店関係者の皆さんとも、また韓国の地でお会いできることを楽しみにしています。この記事をご覧の皆さんも、引き続き一緒に日本の焼酎・酒造業界を応援していきましょう。

모두 함께 “Team JAPAN”!! (Together, "Team JAPAN"!!)

「Busan International Wines & Spirits Expo 2025 」
부산국제주류&와인박람회 2025

開催:2025年12月19日(金)~21日(日)
会場:BEXCO /벡스코(韓国 釜山)
yukiko氏 セミナー日時:12月19日(金)・20日(土)ともに 13:00~(現地時間)
日本パビリオン・セミナー主管:国税庁

【出展企業・銘柄】
(順不同 / 銘柄は公式パンフレット記載商品を掲載)
・大口酒造株式会社:芋焼酎「黒伊佐錦」「黒伊佐錦 原酒」「伊佐小町」
・薩摩酒造株式会社:芋焼酎「黒白波」「彩響」、麦焼酎「神の河」・天星酒造株式会社:芋焼酎「HOJUNバーボン カスクフィニッシュ」「Kesen to Haruka」「吞酔楽 」
・合資会社光武酒造場:芋焼酎 北斗の拳シリーズ「お前はもう死んでいる」(ケンシロウボトル)、「我が生涯に一片の悔い無し」(ラオウボトル)、ジン「Gimlet by Tanino Gimlet」(ウマ娘プリティーダービー!!ボトル)

・チョーヤ梅酒株式会社:梅酒「The CHOYA 熟成一年」
・天吹酒造合資会社:清酒「天吹 純米大吟醸 りんご酵母」、抹茶リキュール「天吹 京都千年抹茶酒」、桃リキュール「天吹 白桃酒」
・ディオニー株式会社:芋焼酎「いもたん」「いもたん HIKO」「いもにゃん 22度」丹後蔵
・株式会社海琳堂:梅酒「8th Ocean  茶梅酒」、ゆず酒「8th Ocean Dreamer 」、清酒「8th Ocean DAICHI 純米大吟醸」
・Rexwell Beverage合同会社:米焼酎「最古蔵」松下醸造場、琉球泡盛「多幸山  44度 HAPPY MOUNTAIN」咲元酒造、麦焼酎「DOTTON FIVE」赤嶺酒造
・MITSUGEN株式会社:焼酎「心ゆくまで」河津酒造、ジン「京都EBISU GIN」SiCX京都東山蒸溜所、梅酒「夜の琥珀」若鶴酒造