東京下町のモノづくりイベント!廃校も活用した「モノマチナイン」で伝統文化取材!

 

東京の御徒町、蔵前、浅草橋エリアを指す通称「徒蔵(かちくら)エリア」で、ものづくりイベント「モノマチ」が開催されました。今回で9回目となった地域活性イベントは、地元メーカー、店舗、職人工房などが主体になって開催されています。全国の中小企業支援活動も担当している焼酎スタイリストyukiko(ユキコ)が、今回は江戸文化、下町文化を受け継ぐ工房や職人の多い地域の取り組みを取材しました。5月26日(金)-28(日)の3日間で行われた地域活性イベントの様子や下町に根づく酒文化を紹介します。

廃校になった小学校を再生!クリエイターの活動の場・台東デザイナーズビレッジ

日本では廃校になった公立小・中学校が2002年から2016年度にかけて6,811校あります。(文部科学省調べ)その約7割にあたる4,198校が再活用されている現状のなか、東京都台東区にある昭和3年築の小島小学校も統廃合により2002年に閉校した経緯があります。

2004年4月に校舎が再活用され、台東デザイナーズビレッジ(以下デザビレ)が設立されました。台東区はもともとバッグ、帽子、アクセサリーの材料仕入れや製造、ファッション関連企業が集積している「モノづくり」の地。

現在はファッションや雑貨、デザイン関連ビジネス分野で起業を目指すデザイナーやクリエイターを支援する施設として運営されています。教室がクリエイターのアトリエやオフィスになり、入居者同士で刺激を受ける環境になっています。

インキュベ―ションマネージャー(通称村長)によるブランド育成のアドバイスや台東区産業部経営支援課や地元金融機関による支援メニューを活用することもできます。再生された小学校は、台東区を拠点に活動する人たちのネットワークが広がる場所になっています。

「モノマチナイン」(第9回モノマチの通称)イベント約1か月前の打合せも取材させていただきました。会議や懇親会もデザビレで行われています。様々な職種のつながりが生まれる場所です。

今年9回目をむかえるモノづくりの地域イベント「モノマチ」当日も、デザビレの施設が開放され、インフォメーションセンターが設置されるなどイベントの核になる会場です。「モノマチ」は、地元企業や問屋、職人工房、クリエイターによって運営され、台東区南部地域(御徒町・蔵前・浅草橋)の170社以上が参加するイベントに育っています。

モノマチ当日の様子。教室がアトリエにや事務所になっていて、クリエイターや職人の作品を見てまわることができます。

靴やバッグなどの革製品や洋服など、デザビレ入居者が手掛けた作品を販売。伝統工芸品をモチーフにしたアイテムなど、発表の場にも。

デザビレの卒業生も「モノマチ」に参加。磁器を使ったアクセサリーなどを制作。

8/12公開の映画「フェリシーと夢のトゥシューズ」にアクセサリー協力が決定しているアーティストも!

 

浅草・下町の文化を現代に伝える「モノマチ」

台東区を拠点にしているクリエイターが手がけた「モノマチ」のガイドブックや地図を片手に、エリアを取材してきました。日本の伝統文化を守り、発展させようとしてる人たちを紹介します。

■海苔のシャンプー!消費期限は思いやりの証

浅草は、「アサクサノリ」で知られるように海苔で栄えた地域でもあります。しかし、食文化の欧米化や生産量の減少によって、今や絶滅危惧種に限定される希少な物です。

モノマチに参加している創業62年の老舗シャンプー屋・タマ美容化学はサロン向けのヘアケアを手造りする企業として、「地元に愛される商品をつくりたい」と浅草で活躍する職人を守るために海苔の成分を抽出したシャンプーも製造販売しています。

「焼酎&泡盛スタイル」モノマチ

海苔は食べるだけではなく髪や地肌にも良いとされています。海苔エキスを配合して髪の潤いと補修に優れた「Pica髪sama(ピカカキサマ)」は、浅草土産として台東区からも推奨されています。「できたてを届けたい!」というシャンプー職人の気持ちを実現するため、大量生産・長期保管をせずに、常に新鮮で上質なシャンプーを作り続ける努力をされています。

肌に優しい商品を届けたいと鮮度にこだわっています。そのため使用期限は3か月間。天然成分を用いているため、原料にこだわりたいユーザーのリピーターが多いそう。

■「色と食の旅プロジェクト」で参加者絶賛!江戸硝子・江戸切子を今に伝える

スタイリストとして、お酒を飲む時にこだわりたいのがグラス。焼酎や泡盛もグラスによって味わいが変わります。「モノマチ」では、日本の伝統工芸である江戸硝子、江戸切子を扱っている木本硝子にお邪魔しました。当日はセミナーも開催されていました。

私がイベントプロデューサーを務めている「色と食の旅プロジェクト」イベントセミナーでも、本格焼酎の特徴を活かすためのグラスをセレクトさせていただきました。「モノマチ」では切子のカッティング体験もあり、「同じ角度や深さを保ってカットするのは難しい!」と体験された方が職人の高度な技術に脱帽されていました。

日本の伝統工芸品「江戸切子」「江戸硝子」。人気の黒の切子は、特にカッティングが難しいのです。

 

ボタン問屋や染物の職人が手掛けたアイテムも。来場されていた方々が「地図を片手に東京下町を歩くのも発見があって楽しいし、実際に見て手に取ると皆さんの取り組みを応援したくなります」と話されていました。

台東区の“まちの酒屋さん”へ。東京下町のお酒事情

「モノマチ」では、酒販店も参加しています。今回は、伊勢宇本店 宮澤さんにお話を伺ってきました。台東区に店を構え、地元飲食店や池袋、新宿、千葉方面の飲食店にもお酒を配達されています。

-2004年頃の焼酎ブームの頃、地元密着型の酒屋としてどのような状況でしたか?

焼酎ブームの頃は、来店されるお客様が「芋(焼酎)を下さい」と購入されることが多かったんです。銘柄を指定することもなく、芋焼酎を求めるお客様ばかりでした。芋焼酎を出せば売れるという時期。でも、ブームが去った後、パッタリ購買の動きも止まってしまって……飲み手が銘柄をきちんと理解しないでモノだけが消費されていました。だから焼酎ファンが定着しきらなかったのかな、という印象があります。

-現在の日本酒人気は、焼酎ブームの頃との違いはありますか?

今、日本酒に注目が集まっていますが「獺祭」「十四代」などお客様が銘柄をちゃんと指定されます。それが以前の焼酎ブームと少し異なるところですね。2020年には東京オリンピックもありますし、台東区もオリンピックの開催エリアに含まれる地域です。ですから、日本のお酒である焼酎や泡盛も再びブームが来ると予測しています。

その時には、ちゃんと銘柄にファンがついてほしいと思います。酒屋としても、取り引きしている飲食店や店頭に買いに来て下さるお客様にしっかり銘柄それぞれの情報を伝えていくことも責任だと考えています。

-台東区に住む地域の方々は、自宅でお酒を飲まれる方が多いのでしょうか?

台東区は個人経営の飲食店も多い地域です。特に「モノマチ」が開催されている御徒町、浅草橋、蔵前エリアは地元住民が近所の飲食店に飲みに行くという生活圏。10年くらい前から店頭試飲会を行っていますが、始めた頃は試飲して下さるものの、お酒を購入して“自宅で飲む”というお客様は今よりも少なかったですね。

鹿児島県など焼酎文化が根付いている地域なら買って飲む方も多いのでしょうが、この辺りでは自宅飲みをする習慣があまりなかったのかもしれません。でも、ここ数年は日本酒人気もあって、一般ユーザーがお酒を買って自宅で飲むという楽しみが少しずつ浸透してきていると思います。

-伊勢宇本店では、どのようなお酒の品揃えを意識されていますか?

うちの場合は、お酒を地域の皆さんに気軽に買って飲んでほしいという気持ちがあるので、焼酎や泡盛もユーザーに馴染みのある芋焼酎「黒霧島」「薩摩宝山」「桜島黒」、黒糖焼酎「れんと」、泡盛「残波」なども置いています。

-ポピュラーな銘柄のほかにも陳列棚には「貴匠蔵」や「尽空」などもありますよね。

そうですね。ポピュラーな銘柄はやはり地域のお客様や飲食店からニーズがあるので扱っています。その他にも、たとえば喜多屋「尽空」などの”空(くう)シリーズ”は焼酎ブームになる前から付き合いがある銘柄なので、ブームが過ぎても頑張ってほしいという気持ちを込めて酒屋としても応援していますね。

-今後、宮澤さんが酒販店として力を入れていきたいことは何でしょうか?

お酒も、やはり人とのつながりです。地域の皆さんに信頼してもらって、これからも買いに来てもらえる酒屋であり続けたいです。焼酎人気も近いうちにやってくると思うので、ユーザーが何を求めているのかというバランスも大事にしながら、酒屋の立場として皆さんに提案することも必要かな、と。

まちの小さい酒屋ですが、地元の皆さんと接点を持って日本の伝統である國酒を応援できたらと思っています。

イベント当日は清酒の利き酒も開催。本坊酒造のリキュール「ボンタンアメのお酒」は人気で最終日にはすでに完売でした。

 

焼酎スタイリストyukikoのリアルトーク

「モノマチ」は台東区の”ものづくり”に携わる地域企業や職人、クリエイターの有志が集まって企画運営されているイベントです。焼酎も、アサクサノリや江戸切子と同じように”ものづくり”であり、受け継がれていくものです。

台東区は焼酎文化が色濃く根付いている地域ではありませんが、お酒はその土地によって飲み方も変わります。その土地に生きる人たちの生活とどのような接点があるのか……鹿児島や宮崎とは異なり、焼酎文化のない地域だからこそ気になっていました。

今後、焼酎人気が高まってきた時に、必ず”まちの酒屋さん”の役割も大きくなります。焼酎文化のない地域でどのようにお酒情報がエンドユーザーに伝わるのか。流行の波がやってきた時に、単純に「売れるから売る」のではなくて、ハンドリングができる酒販店が増えてほしいと願っています。

”ものづくり”は作る環境があることも大事ですが、作ったものをエンドユーザーやクライアントに届けるまでの経路も大事です。宮澤さんも語っていたように、飲食店やエンドユーザーにむけて有益な提案ができる酒販店が今よりも増えたら、とても心強いですよね。

取材に際し、「モノマチ」関係者の皆さん、ありがとうございました。

[取材・撮影・文・構成] yukiko(ユキコ / 焼酎スタイリスト、ファッションスタイリスト)
[協力] 色彩総合プロデュース「スタイル プロモーション」
※写真の無断転用、二次使用はお断り致しております。ご理解ご協力のほど宜しくお願い致します。

 

第9回モノマチ(モノマチナイン)
日時:2017年5月26日(金)-28(日)
場所:東京都台東区南部徒蔵地域一体
参加店:約170店(店舗、メーカー、問屋、職人工房など)

 

 

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